感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスによる胃腸の感染症。健康な成人であれば自然に回復する傾向にありますが、子どもや高齢者は重症化する恐れがあるため注意が必要です。本記事では、感染性胃腸炎の概要から大人と子どもの症状の違い、下痢や嘔吐があるときの子どもの食事メニューについて解説します。
感染性胃腸炎とは細菌やウイルスによる感染症
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスによって胃腸炎が引き起こされる感染症です。原因となる主な病原体はノロウイルスとロタウイルス。細菌や寄生虫によっても引き起こされます。感染者は幼児から学童期が中心です。
多種多様な病原体が原因になるため明確な流行のパターンはありませんが、傾向としては毎年冬の初めから増加し始めて12月ごろにピークを迎えます。その後、春に再度なだらかなピークを迎え、初夏までゆるやかに流行が続く傾向です。
感染性胃腸炎の感染経路
感染性胃腸炎の感染経路は以下の通りです。
経口感染 | 病原体に汚染された食品を口にすることで感染する |
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接触感染 | 病原体が付着した手で口や鼻などを触れることで感染する |
飛沫感染 | 感染者の嘔吐物や便の飛沫を吸い込むことで感染する |
ノロウイルスの場合は、感染者の嘔吐物や便が乾燥して、ほこりなどに付着すると空気中に漂います。このほこりを吸い込むとノロウイルスに感染するため、嘔吐物や便を処理した場所は、次亜塩素酸ナトリウム消毒液で消毒する必要があります。
感染性胃腸炎の子どもと大人の症状の違い
ここでは、ノロウイルスとロタウイルスに分けて、感染性胃腸炎の子どもと大人の症状の違いを解説します。
1.ノロウイルスによる胃腸炎
ノロウイルスによる胃腸炎の主な症状は以下の通りです。
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 発熱
症状は24〜48時間続きます。子どもは嘔吐、大人は下痢症状が多い傾向です。健康な成人は軽症で回復します。しかし、子どもと高齢者は重症化や嘔吐物による窒息のリスクがあるため注意が必要です。
また、高齢者は誤嚥(ごえん:気管に嘔吐物が入ること)によって肺炎を引き起こすことがあります。発熱に加えて、咳や濃い色の痰などの症状が現れている場合は受診を検討してください。
2.ロタウイルスによる胃腸炎
ロタウイルスによる胃腸炎の主な症状は以下の通りです。
- 発熱
- 腹部の不快感
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 白い便
- 腹痛
症状は5〜6日ほど続きます。大人は何度も感染しているため、多くの場合症状は現れません。一方、乳幼児は激しい症状が現れる傾向です。とくに初感染の際に症状が強く出る傾向で、脱水症状により点滴や入院が必要になることもあります。
子どもや高齢者に「尿が少ないまたは色が濃い」「唇や手のひらが乾燥している」「顔色が悪くぐったりしている」などの症状が現れている場合は、脱水症状の恐れがあります。速やかに医療機関を受診してください。
感染性胃腸炎の治療方法
感染性胃腸炎は、症状に応じた対症療法が主な治療方法です。細菌が原因である場合は抗生物質を使用することもあります。
まず、水分と消化のよい食事を摂りながら安静にするのが基本です。脱水症状に対しては点滴で対応します。下痢止めは回復を遅らせる恐れがあるため、整腸剤(腸内環境を整える薬)で対応することが多いです。
子どもが感染性胃腸炎にかかった際の食事メニューについて
感染性胃腸炎などにより急性の下痢が生じると、腸にダメージが及び腸の機能が低下します。この間は食事メニューや食事ペースに気を配る必要があります。
吐き気や嘔吐があるときは落ち着くまで待ちましょう。水分摂取は1度に多く飲ませると吐いてしまいます。5分ごとを目安にスプーンやスポイトで少しずつ飲ませてください。水分は経口補水液などがおすすめです。
イオン飲料は甘みが強く虫歯や肥満のリスクがあるため、水の代わりや就寝前に飲ませるのは控えましょう。ここからは、嘔吐や下痢の症状が現れている際の乳児・幼児・学童の食事メニューや食事ペースについて解説します。
1.乳児|ミルク、離乳食
乳児はミルクと離乳食の量を普段の3分の2くらいに減らします。減った分は水分で補いましょう。水分だけを摂っていても、何度も嘔吐を繰り返している場合は点滴が必要になることがあります。前述した脱水を疑う症状が現れている場合は、速やかに医療機関を受診してください。
2.幼児|うらごししたお粥、パン粥など
幼児は、非常に消化の良いうらごししたお粥やパン粥などにしましょう。1回量は普段の半分以下にして、食事間隔は2時間ほど空けてください。足りない分は水分と食事の回数を1日4〜5回にして補います。
嘔吐がなくなったら、食事メニューをおかゆや煮込みうどんなどに変更しても問題ありません。食事量は普段の半分から3分の2へと徐々に増やしていきます。嘔吐や下痢が改善しない場合は、脱水症状のリスクがあるため医師に相談しましょう。
3.学童|おかゆ、煮込みうどんなど
学童期の子どもは、消化の良いおかゆ、煮込みうどんなどにしましょう。1回量は普段の半分ほどにして、食事間隔は2時間以上空けてください。足りない分は水分と食事の回数を1〜2回増やして補います。嘔吐や下痢が数日以上続く場合や血便がある場合は、医療機関を受診してください。
感染性胃腸炎の予防方法
ロタウイルスには、主に乳幼児を対象にした予防接種ワクチンが存在します。一方、ノロウイルスにはワクチンが存在しません。そのため、十分な感染予防対策を実施する必要があります。
基本的な感染予防の方法は、外出後、食事前、トイレ後の手洗いの徹底です。また、ノロウイルス感染者の便や嘔吐物は乾燥すると空気中に漂うため注意が必要です。
処理する際は、使い捨ての手袋、マスク、エプロンを着用して、ビニール袋にしっかり密閉して廃棄しましょう。床などに嘔吐物や便が付着した際は、次亜塩素酸ナトリウム消毒液で消毒してください。
基本的な感染対策を徹底して感染性胃腸炎を予防しよう
感染性胃腸炎の基本的な感染予防法は、外出後、食事前、トイレ後の手洗いの徹底です。ロタウイルスには、予防接種ワクチンが存在するため、対象の子どもがいる場合は接種を検討してください。
感染性胃腸炎は嘔吐や下痢により脱水症状になる恐れがあります。疑われる症状が現れた際は、速やかに医療機関を受診してください。
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