コラム

溶連菌感染症とは?子どもと大人が気づかず放置するリスクも解説

溶連菌感染症とは、主にA群レンサ球菌が引き起こす気道の感染症です。子どもが感染しやすいと認識されている傾向ですが、大人も子どもから感染して発症することがあります。子どもと大人どちらも気づかず放置すると、合併症を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。本記事では、溶連菌感染症について解説します。

溶連菌感染症とは溶血性レンサ球菌による感染症

溶連菌感染症とは、溶血性レンサ球菌による感染症です。溶連菌はさまざまな種類がありますが、原因の9割がA群レンサ球菌です。溶連菌は主に喉に感染して咽頭炎を引き起こします。

溶連菌感染症は子どもに多い感染症ですが大人も発症します。大人が発症するときつい症状が現れる傾向があるため注意が必要です。毎年、冬と春から初夏にかけて流行します。

溶連菌感染症の感染経路

溶連菌の主な感染経路は以下の通りです。

飛沫感染感染者がくしゃみや咳をすることで、細菌を含んだしぶきが周囲に飛び散る。そのしぶきを口や鼻などから吸い込むことで感染する。
接触感染感染者がくしゃみや咳を手で押さえ、その手で物や人に触れると細菌が付く。細菌が付いた部分を他の人が触れ、その手で口や鼻を触ると感染する。
経口感染感染者が食品の前で咳やくしゃみをして食品に細菌が付く。他の人がその食品を口にすることで感染する。

大人の溶連菌感染症は子どもからうつることが多いです。大人はかからない感染症と認識せず、子どもが感染したら感染対策を徹底することが大切です。

溶連菌感染症の子どもと大人の症状の違い

溶連菌感染症の主な症状は以下の通りです。

  • 突然の高熱
  • 焼けるような喉の痛み
  • 嘔吐
  • 体のだるさ
  • イチゴ舌(舌にイチゴ状のぶつぶつが現れる)

3歳以下の子どもが発症すると、発熱や鼻炎症状、不機嫌、食欲不振などの症状が現れる傾向があります。大人が発症しても、高熱や喉の痛みなどきつい症状が現れます。大人は劇症型溶血性レンサ球菌感染症という、急激かつ劇的に進行する感染症を引き起こすことが多い傾向です。

子どもと大人が溶連菌感染症を気づかず放置するリスク

子どもと大人どちらも溶連菌感染症を気づかず放置すると、以下のような合併症を引き起こすリスクがあります。

病名発症しやすい年代
劇症型溶血性レンサ球菌感染症
(人食いバクテリア)
子どもから大人まで幅広く発症するが、特に30歳以上の大人に発症しやすい。
リウマチ熱5〜15歳くらいの子どもに多く見られる。
急性糸球体腎炎
(きゅうせいしきゅうたいじんえん)
一般的に4歳〜10歳の子どもに見られるが、成人や高齢者にも時々見られる。

それぞれの詳細を解説します。

1.劇症型溶血性レンサ球菌感染症(人食いバクテリア)

溶連菌に感染した際に、重い症状を引き起こす病状です。子どもから大人まで幅広く発症しますが、特に30歳以上の大人に発症しやすいです。

数十時間以内に手足が壊死(えし:細胞が壊れること)したり、生命維持に必要な臓器が障害されたりすることから「人食いバクテリア」とも呼ばれています。

症状は以下のような流れで進行します。

  1. 腕や足の痛みや腫れ、発熱、血圧低下などの症状から始まる
  2. その後、感染の原因となった部位が壊死したり呼吸状態が悪化したりする

発症から数十時間以内に上記のような流れで重症化し、ショック状態(血液が全身に十分に回らなくなること)に陥り死亡することもあります。

治療には、迅速な抗生物質の投与や必要に応じた手術、全身の状態の管理などが必要です。疑われる症状が現れた際は、速やかに医療機関を受診してください。

2.リウマチ熱

リウマチ熱は、溶連菌に感染したあとに免疫の反応によって起こる合併症です。5〜15歳の子どもに多く見られます。主な症状は以下の通りです。

症状詳細
関節炎複数の関節で同時に痛みが現れる。その痛みが移動する特徴がある。
舞踏病
(ぶとうびょう)
自分の意思とは関係なく体が動いてしまう。
輪状紅斑
(りんじょうこうはん)
輪のような赤い発疹が現れる。
皮下結節
(ひかけっせつ)
皮膚の下に小さなしこりができる。

関節炎に関しては20〜30歳にも多く見られます。溶連菌感染症のあとに、以上のような症状が現れた際はリウマチ熱を疑ってください。心臓に炎症が起きることがあるため、放置しないで医師に相談しましょう。

3.急性糸球体腎炎

急性糸球体腎炎は溶連菌に感染したあとに、10日前後の潜伏期間を得て現れることがある腎臓の合併症です。糸球体という腎臓の一部に炎症が起きます。一般的に4〜10歳の子どもに見られますが、成人や高齢者も時々発症します。主な症状は以下の通りです。

  • 尿に血が混じる
  • 顔やまぶた、足がむくむ
  • 尿の量が少なくなる
  • 血圧が高くなる

溶連菌感染症のあとに、以上のような症状が現れたら急性糸球体腎炎を疑い、医療機関を受診しましょう。

子どもが溶連菌感染症にかかった際の4つの対応方法

子どもが溶連菌感染症にかかった際は、以下のような4つの対応をとりましょう。

  1. 病状が悪化していないか観察する
  2. 注意すべき症状が現れたらすぐに受診する
  3. こまめに栄養と水分を摂る
  4. 療養できる環境を作り安静にする

それぞれの詳細を解説します。

1.病状が悪化していないか観察する 

以下を参考にして病状が悪化していないか観察しましょう。

  • 熱は上がっていないか
  • 喉の痛みはあるか
  • 顔色や機嫌は悪くなっていないか
  • 関節に痛みを訴えていないか
  • 体に発疹やしこりができていないか
  • 尿の量が少ないまたは色が濃くなっていないか
  • 尿に血が混じっていないか
  • 顔やまぶた、足がむくんでいないか

体温は1日4回は測定してください。尿の量が少ないときまたは色が濃いときは、水分を多めに与えましょう。

2.注意すべき症状が現れたらすぐに受診する

以下の症状が現れた際は、重症化している恐れがあります。

  • 呼びかけてもぼんやりしており反応が鈍い
  • 水分を十分に摂っているにもかかわらず尿が少ないまたは色が濃い
  • 呼吸が苦しそう
  • 首が硬直して曲げにくい
  • 泣き止まない
  • 耳を痛がる

以上の症状が現れたら、落ち着いて医療機関を受診してください。

3.こまめに栄養と水分を摂る

熱が高いと、水分が奪われて脱水症状を起こす恐れがあります。以下を参考にして、飲めそうなもので水分をこまめに摂りましょう。

  • 経口補水液
  • 乳幼児用イオン飲料
  • 麦茶
  • うすめた果汁
  • 野菜スープ

イオン飲料は甘みが強く、虫歯や肥満のリスクがあります。寝る前や水代わりに飲むのは控えてください。食事はおかゆやうどん、離乳食など食べやすいものを少しずつ与えます。食事が進まないときは、アイスクリームやプリン、ゼリーなどを与えても問題ありません。

4.療養できる環境を作り安静にする

以下のように、療養に適した環境で安静にすることが大切です。

  • 秋から冬の室温は20℃を目安にする
  • 夏の室温は26〜28℃を目安にする(大人が快適と感じる室温で良い)
  • 加湿器やぬれタオルで部屋の湿度を保つ
  • 熱が高いときは厚着したり布団を掛けすぎたりしないようにする
  • 熱の出始めは寒気から始まることが多いため毛布やタオルケットで暖める

背中に手を入れて汗をかいていたら、布団のかけ過ぎや厚着のしすぎであるため調整しましょう。加湿器はこまめに水を取り替えないと、雑菌をばらまいてしまうので注意してください。

療養中は安静に過ごすことが大切ですが、無理に寝かせる必要はありません。体が楽になるまで、抱っこしたり添い寝をしたりして、子どもが静かに休めるように工夫しましょう。

溶連菌感染症の治療方法

溶連菌感染症の主な治療方法は抗生物質の内服です。合併症予防のために7〜10日は内服します。合併症を予防するためには、たとえ途中で症状が改善しても指示された期間飲みきることが大切です。

抗生物質は間違った内服をしてしまうと、耐性菌という薬が効かなくなる細菌が生まれることがあります。抗生物質の内服方法は医師の指示に従うようにしてください。

喉の痛みや発熱により食事があまり取れなくなることもあります。その際は水分をこまめに摂るようにしてください。喉の痛みは、熱いものや辛いもので悪化する恐れがあるため控えましょう。

溶連菌感染症の予防方法

溶連菌に対する有効なワクチンはありません。そのため、溶連菌感染症の予防は、基本的な感染対策が大切です。基本的な感染対策とは以下の通りです。

  • 換気
  • マスクの装着
  • 手洗い
  • うがい

手洗いは外出後や食前に行いましょう。流行時期は人混みを避けるようにしてください。前述した通り、大人の溶連菌の感染経路は子どもからが多いため、家庭内でも感染対策を実施してください。例えば、感染者が触れたドアノブやテーブル、おもちゃなどをアルコール消毒したり、生活空間を分けたりすることです。

溶連菌感染症における学校や保育園の出席・登園停止の基準

溶連菌は学校保健安全法施行規則第18条において、第3種感染症に指定されています。医師から感染が広がる恐れがないと指示が出るまでは、登校・登園をしてはいけません。

溶連菌は感染力が強いため、仕事なども休んだほうがよいでしょう。出勤の目安は、職場ごとに規定がある場合があるため、上司などに相談してください。

溶連菌感染症が疑われる症状が現れたら速やかに治療しよう

溶連菌感染症は、子どもだけでなく大人も発症することがあります。突然の高熱や喉の痛み、嘔吐、体のだるさなどの症状が現れた際は、溶連菌感染症を疑い医療機関を受診してください。

関節の痛みや血の混じった尿、顔面の腫れなどが現れている場合は、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を引き起こしている恐れがあります。また、腕や足の痛みや腫れ、発熱などが起きている場合は、劇症型溶血性レンサ球菌感染症を発症している恐れがあります。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、急激に進行して危険な状態になることがあるため、速やかに医療機関を受診しましょう。

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