コラム

クラミジア感染症の男性と女性の症状|放置するとどうなるかも解説

クラミジア感染症は日本で最も多い性感染症。男性では半数、女性では多くの場合に自覚症状が現れないため、感染しても気付かないことが多いです。不妊の原因になることもあるため、適切な知識を身に付けて感染予防に努めることが大切です。

本記事では、クラミジア感染症の概要や男性と女性の症状などについて解説します。

クラミジア(性器クラミジア感染症)とは?

クラミジア感染症とは、日本で最も多い性感染症です。クラミジア・トラコマチスという細菌が性器に感染することで発症します。咽頭や眼、肛門などにも感染することがあるため注意が必要です。

感染者は若年層の女性に多い傾向です。女性は自覚症状が乏しく発見に至らないことが多いです。

クラミジア感染症は、適切な治療を受けずに放置すると、不妊につながる恐れがあります。初交年齢(初めて性交を経験した年齢)が低下していることもあり、将来の不妊が憂慮されています。

また、妊婦健診において、3〜5%の割合でクラミジアに感染している妊婦が見られています。妊娠前や妊娠中においても性病検査を受けることは重要です。妊婦が感染すると早産や流産、出産時の赤ちゃんへの感染のリスクが高まるためです。

クラミジア感染症の感染経路

クラミジア感染症は性交渉だけでなく、以下のような性交類似行為によっても感染します。

性交類似行為詳細
オーラルセックス口を使って相手の性器を刺激する行為。咽頭や性器に感染が広がる。
アナルセックス男性の性器をパートナーの肛門に入れる行為。性器や肛門に感染が広がる。

他にも、妊婦がクラミジア感染症を発症している場合は、産道を介して母親から赤ちゃんへ感染することがあります。

クラミジア感染症の男性と女性の症状

クラミジア感染症は1〜3週間の潜伏期間のあとに発症します。発症しても、男性も女性も症状が現れないことがありますが、感染に気付くためには男性と女性それぞれの症状を理解しておくことが大切です。

ここからは、クラミジア感染症の男性と女性の症状を解説します。

男性は尿道炎を引き起こす

男性は、尿道炎を引き起こし以下のような症状が現れます。

  • 排尿時に軽い痛みや違和感が現れる
  • 尿道から膿が出る
  • 尿道付近にかゆみが生じる
  • 陰のう付近に腫れや痛みが現れる
  • 熱が出る

男性で症状が現れるのは半数ほどです。そのため、クラミジアに感染していることに気付かないで、感染を広げてしまう恐れがあります。疑われる症状が現れたら、医療機関を受診するようにしてください。

女性はほとんど自覚症状が現れない

女性がクラミジアに感染した場合は、ほとんど症状が現れない特徴があります。症状が現れた場合は、初期におりものや軽い下腹部の痛みが出る程度です。

その他に症状が現れるとしたら以下のようなものです。

  • 排尿時の痛みや違和感、かゆみ
  • 性器からの出血
  • 性交渉時の痛み

男性と比較して女性は自覚症状が乏しく、知らない間に感染を広げてしまうリスクが高いです。また、進行すると不妊につながる恐れがあるため、疑われる症状が現れた際は放置せず医療機関を受診してください。

咽頭や直腸、眼などにクラミジアが感染した場合に発症する病気

性交類似行為により、咽頭や直腸、眼にクラミジアが感染すると、以下のような病気を発症するリスクがあります。

病気特徴
咽頭クラミジアオーラルセックスなどにより咽頭に感染する。多くの場合は自覚症状が現れない。
クラミジア直腸炎アナルセックスにより感染する場合と、クラミジアに感染した女性の膣分泌物が肛門に流れて感染する場合がある。腹痛や下痢、粘液の混じった血便などの症状が現れる。無症状で経過する場合も多い。
クラミジア結膜炎クラミジア感染者の分泌物が手指を介して、眼の粘膜に接触することで発症する。眼の充血、膿の混じった目やに、まぶたの腫れなどの症状が現れる。

妊娠中のクラミジア感染症による母親や赤ちゃんへの影響

妊婦がクラミジアに感染すると、流産や早産のリスクが高まります。また、感染したまま出産すると、産道を介して赤ちゃんにクラミジアが感染する恐れがあります。

赤ちゃんがクラミジアに感染すると、以下のような病気を引き起こす恐れがあります。

病気特徴
クラミジア結膜炎5〜12日の潜伏期間のあとに、激しい眼の充血や膿の混じった目やに、まぶたの腫れなどが現れる。生後30日以内にこれらの症状が現れた場合はクラミジア結膜炎を疑う。
クラミジア肺炎生後1〜3カ月の潜伏期間のあとに発症する。一般的に熱が出ることはなく、喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーという音の呼吸)や痰、血の出る咳などの症状が現れる。

これらの病気は重症化する恐れがあります。流産や早産、赤ちゃんへの感染を予防するためにも、妊娠前にパートナーと一緒に検査を受けることが大切です。

クラミジア感染症を放置するとどうなるのか

クラミジア感染症は適切な治療を受けずに放置すると、以下のようなことを引き起こす恐れがあります。

  • 男性は前立腺炎などを引き起こす
  • 女性は不妊につながる

それぞれの詳細を解説します。

男性は前立腺炎などを引き起こす

男性は以下のような合併症を引き起こすリスクがあります。

合併症特徴
前立腺炎前立腺に細菌が侵入して炎症が起きる病気。尿道の違和感や排尿時の痛み、陰のうの痛みなどの症状が現れる。重度であると高熱が出ることがある。
精巣上体炎
(せいそうじょうたいえん)
精巣の横にある精巣上体に細菌が侵入して炎症を起こす病気。精巣上体や陰のうの痛み、腫れ、発熱などの症状が現れる。悪化すると皮膚が破れて膿が出ることがある。

男性も場合によっては不妊の原因になる恐れがあります。

女性は不妊につながる

女性は放置すると以下のような合併症を引き起こし、不妊につながるリスクがあります。

合併症特徴
骨盤内炎症性疾患骨盤内にある卵巣や子宮内膜、卵管(子宮と卵巣の間にある細い管)などに細菌が侵入して炎症が起きる病気。下腹部の痛みやおりものの増加、性器からの不規則な出血、発熱などが現れる。
子宮外妊娠卵管などの通常とは異なる部分に受精卵が着床する病気。診断されないまま経過すると、お腹の中で大量出血が起きて危険な状態になる恐れがある。治療するには手術による摘出が必要である。

 

疑われる症状が現れた際は、放置しないで医療機関を受診してください。

クラミジア感染症と淋病の違い

クラミジア感染症と淋病の違いは以下の通りです。

クラミジア感染症淋病
病原体クラミジア・トラコマチス淋菌
感染経路性交渉、オーラルセックス、アナルセックス
潜伏期間1〜3週間2〜7日間
症状男性半数は症状が現れない。尿道のかゆみ、排尿時の軽い痛み、尿道からの分泌物など。尿道のかゆみ、尿道からの粘液や黄色の膿、排尿時の痛み、性器全体の腫れなど。
女性無症状が多い。黄色のおりもの、下腹部の痛み、出血など。無症状が多い。緑黄色のおりものや尿道からの膿など。
検査尿、おりもの、尿道の分泌物、咽頭ぬぐい液、咽頭うがい液を採取して調べる検査。
治療抗菌薬(細菌を死滅または増殖を抑える薬)の内服抗菌薬の注射または内服
妊婦への影響早産や流産のリスクの上昇
赤ちゃんへの影響結膜炎や肺炎のリスクの上昇結膜炎や関節炎のリスクの上昇

クラミジア感染症の主な検査方法

クラミジア感染症の主な検査方法は、以下を検体として感染の有無を調べることです。

  • 尿
  • おりもの
  • 尿道の分泌物
  • 咽頭うがい液
  • 咽頭ぬぐい液

クラミジア感染症を含め性感染症の多くは、パートナーも感染していることがほとんどです。疑われる症状が現れている場合は、パートナーと一緒に検査を受けてください。

なお、管轄の保健所で無料かつ匿名で検査を受けられる場合があります。気になる方は、問い合わせてみましょう。

クラミジア感染症の治療方法

クラミジア感染症の治療方法は抗菌薬の内服です。クラミジア感染症は男性も女性も症状が現れないことがあります。症状がないからといって安心せず、パートナーも一緒に検査と治療を進めてください。

また、頻度は少ないですが、クラミジアにおける薬剤耐性菌も現れ始めています。薬剤耐性菌とは抗菌薬が効かないまたは効きにくい菌のことです。

薬剤耐性菌は、自己判断による抗菌薬の内服の中断などで発生する恐れがあります。内服期間は医師の指示を守り飲みきってください。

クラミジア感染症の感染予防のポイント

クラミジア感染症には、有効な予防接種等はありません。まずは正しくコンドームを使用することが重要です。また、性交類似行為においてもコンドームを着用して、性器や口腔粘膜に体液が直接触れないようにすることが大切です。

コンドームだけで100%予防できるわけではありません。その他にも、感染予防のために以下のことを心がけてください。

  • 不特定多数との性交渉や性交類似行為は避ける
  • 感染の疑いがある人との性交渉や性交類似行為は避ける
  • 定期的に検査を受ける

クラミジア感染症は一度治っても、何度でも感染します。疑われる症状が現れている場合は、早めに検査を受けてください。

クラミジア感染症を予防するために正しい知識を身に付けよう

クラミジア感染症は、日本で最も多い性感染症。特に女性の割合が多く、放置すると不妊につながる恐れがあるため注意が必要です。感染を予防するにはコンドームの適切な使用はもちろん、不特定多数との性交渉を避けることが大切です。

また、コンドームにより100%予防できるわけではありません。性交類似行為においてもコンドームを使用して、体液が粘膜に触れないようにしてください。

クラミジア感染症の感染拡大を防ぐには、定期的に検査を受けることも大切です。自覚症状が乏しいため、感染しても気付かず知らない間に感染を広げてしまうリスクがあるためです。

妊婦が感染すると流産や早産のリスクが高まります。妊娠前にパートナーと一緒に検査を受けるようにしてください。

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