糖尿病の発症または進行を抑制するには、食事メニューに注意する必要があります。そのためには、自分に必要なエネルギー量や糖質制限の重要性を理解することが大切です。本記事では、糖尿病の食事の作り方3ステップをはじめとして、飲食店やコンビニでの食事の選び方、食べ方のポイント7つなどを解説します。
【レシピ付き】糖尿病の食事の作り方3ステップ
糖尿病の食事の作り方3ステップは下記の通りです。
- まずは自分の1日に必要エネルギー量を知る
- 糖質制限について理解する
- 栄養バランスのよい食事を作る
それぞれ解説します。
1.まずは自分の1日に必要エネルギー量を知る
1日に必要なエネルギーの目安は、男性で2000〜2400kcal、女性で1400〜2000kcalです。
より詳細なエネルギー量を計算する方法は下記の通りです。
- 身長(m)×身長(m)×22=標準体重
- 標準体重×身体活動量(kcal)=1日に必要なエネルギー量
身体活動量の目安
デスクワーク、主婦 | 25~30kcal/㎏ |
---|---|
立ち仕事が多い職業 | 30~35kcal/㎏ |
力仕事が多い職業 | 35~kcal/㎏ |
2.糖質制限について理解する
糖尿病の食事において、炭水化物(糖質)の制限は大切です。目安としては総エネルギー量の40〜60%を推奨しています。
糖質は人のエネルギーの源になります。しかし、過剰に摂取してしまうと糖尿病のみならず肥満やメタボリックシンドローム(内臓肥満や高血糖、高血圧、脂質異常症などが重なっている状態)を引き起こす可能性があります。
特に近年の食生活として、ラーメンとチャーハン、パスタとパン、うどんとごはんなどの組み合わせが見られます。このような食生活は糖質を過剰に摂取してしまうため注意が必要です。
3.栄養バランスのよい食事を作る
国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターを参考に、約2000kcal(炭水化物50%)のレシピを解説します。
メニュー | レシピ | |
---|---|---|
朝食 | ライ麦パン(80g)オリーブ油(5g)キャベツツナオムレツミニトマトいちご(125g) | 【キャベツツナオムレツ】(2人分)たまご:3個キャベツ:2枚シーチキン缶(ノンオイル):1缶ミックスチーズ:40g塩:小さじ1/4こしょう:少々サラダ油:大さじ1 |
昼食 | 焼きそば(麺160g)サラダ(レタス、きゅうり、ゆで卵1/3、ゴマドレッシング)バナナ1本無調整豆乳(100ml) | 【焼きそばのレシピ】(1人分)中華そば:160g豚肩ローススライス:45gキャベツ:3枚人参:1/3本たまねぎ:1/3本ピーマン:2/3個青のり粉:少々ソース:大さじ2杯酒:大さじ1杯ほどこしょう:少々サラダ油:小さじ1程度 |
夕食 | ごはん(210g)鮭の塩焼き(70g)付け合わせのボイルにんじんカボチャサラダもやしの三つ葉浸し(もやし70g、糸三つ葉3g、醤油少量)ヨーグルト(100g) | 【カボチャサラダのレシピ】(1人分)カボチャ:40g玉ねぎ:10gマヨネーズ:5g粉辛子:少々塩こしょう:少々パセリ粉:少々 |
糖尿病の外食の選び方
飲食店やコンビニによる食事は、糖質を過剰に摂取してしまう可能性があります。ここでは、外食の上手な組み合わせ方法やコンビニの食事メニューの一例を解説します。
飲食店の場合 |外食の上手な組み合わせ方法
外食の問題点として、炭水化物、脂質、塩分が多く、野菜類が少ないことが挙げられます。外食の際は以下のポイントに注意しましょう。
外食の上手な組み合わせ方法
問題点 | 組み合わせや食べ方のポイント | |
---|---|---|
うどん・そば類 | 野菜やタンパク質が不足しやすい糖質が多い麺類とごはんの組み合わせのメニューが多い | 卵をトッピングして満腹感を高める野菜料理を組み合わる麺類とごはんもの組み合わせは控える |
丼もの | ごはんの量が多くなりやすい塩分が多い野菜が少ない | ごはんの量は1日に必要なエネルギー量を参考にする野菜料理を組み合わせる |
寿司 | ごはんの量が多くなりやすい野菜が少ない | 食べる個数を決めておく以下を参考にしてごはんの量を調整するにぎり:20g太巻き:26g細巻き:15g |
定食 | 主食の量が多くなりやすい主菜の内容によっては高カロリーになりやすい汁物や漬物により塩分が多くなる | ごはんの量は1日に必要なエネルギー量を参考にする揚げ物などの主菜は控える漬物に醤油をかけない汁物は半分ほど残す |
中華 | 油を多く使うメニューが多いラーメンとチャーハンなど炭水化物の組み合わせが多い炭水化物と油の組み合わせは血糖値が下がりにくい特徴がある | ラーメンかチャーハンどちらかにする野菜が多いメニューを選ぶラーメンの汁は飲まない |
洋食 | 炭水化物と油を多く取りやすいご飯とパスタなど炭水化物の組み合わせがある単品の場合は野菜が不足しやすい | サラダなど野菜類を組み合わせる主食の量は1日に必要なエネルギー量を参考にする |
コンビニの場合|1日の食事メニューの例
コンビニを利用した食事メニューは、おにぎりやパンなどの主食のみになりやすく、食物繊維やビタミン、たんぱく質が不足しがちです。主食・主菜・副菜を組み合わせることで栄養バランスを整えられます。約2000kcal(炭水化物60%)の組み合わせの例を挙げると以下の通りです。
メニュー | 組み合わせや食べ方のポイント | |
---|---|---|
朝食 | 雑穀米のおにぎりおにぎりゆで卵調製豆乳(200ml) | おにぎりは食物繊維が豊富なむぎや玄米を使ったものを選ぶ乳製品や豆乳でタンパク質やミネラルを摂取する |
昼食 | 中華丼(野菜が豊富に入っているもの)海藻とオクラのサラダヨーグルト | 野菜が多い食品を選ぶ麺類や丼ものだけにせずサラダを組み合わせるタレやドレッシングなどはできるだけ控える |
夕食 | むぎごはん(150g)さばの味噌煮ポテトサラダ(200kcal)皮剥きりんご(80g) | 不足しやすい魚や大豆製品などを選ぶ |
糖尿病の食事における食べ方の7つのポイント
糖尿病の食事における食べ方の7つのポイントは下記の通りです。
- 腹八分目にする
- 野菜や海藻から先に食べる
- 食事は15分以上時間をかける
- 3食規則正しく食べる
- 間食は15時に1日1回とする
- 飲酒は適度な量にする
- 減塩を心がける
それぞれ解説します。
1.腹八分目にする
日々の食事のとりすぎは2型糖尿病の発症または進行の原因になります。前述した自分に必要なエネルギー量を目安に炭水化物は40〜60%、脂質は20〜30%、タンパク質は20%までの割合にしましょう。また、満腹は食べ過ぎであるため腹八分目を目安にしてください。
2.野菜や海藻から先に食べる
食べ物には血糖値を上げやすいものと上げにくいものがあります。野菜や海藻を先に食べると血糖の急激な上昇を防ぐことが可能です。
反対に、ごはんやパンなどの炭水化物は血糖値を急激に上昇させてしまいます。主食よりも野菜などのおかずを先に食べるようにしましょう。
3.食事は15分以上時間をかける
早食いは満腹中枢が刺激されるまでに食べ過ぎてしまったり、血糖値の急激な上昇を招いたりしてしまいます。満腹中枢が血糖値の上昇を感知する時間である15分を目安に食事を摂りましょう。
「一口量を減らす」「よく噛む」「食べることに集中する」などの工夫をすると、血糖値の上昇を緩やかにして早食いも予防できます。
4.3食規則正しく食べる
朝食や昼食を抜いてしまうと、一回の食事の際に血糖が上がりやすくなります。また、空腹により一度の食事量が多くなってしまうこともあります。食事は1日3食を心がけるようにしましょう。
5.間食は15時に1日1回とする
間食を何度もしてしまうと血糖値が高い状態が続きます。結果、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)に負担をかけてしまい、糖尿病の発症リスクの上昇や病状の進行を招きます。
特に夕食後と就寝前の間食は、肥満の原因にもなり糖尿病のリスクを高めます。間食する場合は、体をよく動かしたあとの15時ごろを目安にしましょう。
6.飲酒は適度な量にする
適度な飲酒は糖尿病の発症を抑えるといわれていますが、多量の飲酒は高血糖を引き起こします。飲酒量は以下を参考にしましょう。
1日あたりの適度な飲酒量
ビール中瓶(5度) | 日本酒(15度) | 焼酎(25度) | ウイスキー(40度) | チューハイ(7度) | ワイン(12度) |
---|---|---|---|---|---|
1本/500ml | 1合/180ml | 0.6合/100ml | 60ml | 350ml | 200ml |
7.減塩を心がける
糖尿病を発症している方や予備軍である方は、減塩による高血圧予防も大切です。高血糖に加えて高血圧を合併すると、動脈硬化(血管の弾力性が失われた状態)が進行してさまざまな合併症のリスクが高まります。1日の塩分の量は男性で7.5g未満、女性で6.5g未満までにしましょう。
糖尿病の食事の注意点
糖尿病の食事において以下の2つに注意する必要があります。
- 腎臓や心臓の病気による栄養制限に注意する
- 加糖の飲み物に注意する
それぞれ解説します。
腎臓や心臓の病気による栄養制限に注意する
糖尿病の他に腎臓や血管に病気がある場合は、下記のように栄養制限が必要なことがあります。
- 高血圧がある場合:塩分制限(1日6g未満)
- 腎臓の病気がある場合:タンパク質制限
- カリウムが高い場合:カリウム制限
担当の医師や腎臓の専門医、管理栄養士に相談して適切な指導を受ける必要があります。
加糖の飲み物に注意する
健康のためにと飲んでいる野菜ジュースやフルーツジュースなどにも、多量の糖分が含まれている場合があります。例えば下記の通りです。
清涼飲料水に含まれる糖分の目安
飲料の種類 | スティックシュガーの本数(1本3g) |
---|---|
野菜ジュース | 3本 |
トマトジュース | 3.5本 |
にんじんジュース | 6本 |
【一覧】糖尿病の方が食べていけないものといいもの
糖尿病の方や発症リスクのある方が、たくさん食べることを推奨されないのはGI値が高い食べ物です。GI値とは、血糖値に影響を与える食品を数値化したものです。GI値は下記の表を参考にしましょう。
食品GI値の一覧表
高GI食品(70以上) | 白米、白パン、スナック菓子、ジャム、にんじん、ジャガイモ、里芋など |
---|---|
中GI食品(56〜69) | オートミール、ライ麦パン、パイナップル、さつまいも、アイスクリーム、柿など |
低GI食品(55以下) | 全粒粉パン、そば、葉物野菜、きのこ類、豆類、牛乳、肉類、魚介類、りんごなど |
糖尿病における食事は適切な指導を受けることが大切
糖尿病の食事は、1日に必要なエネルギーと糖質制限について理解し、バランスの良いメニューにする必要があります。また、血糖値の急激な上昇を抑えてくれる食物繊維を豊富に含んだ野菜類や海藻類、きのこ類などを組み合わせることが大切です。
とはいえ、糖尿病の発症または進行を抑制するには、食事以外にもさまざまなことに注意しなければなりません。担当の医師や管理栄養士から適切な指導を受けるようにしましょう。
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