コラム

蕁麻疹の原因とは|おとな・子どもで違う?原因を知って正しく対処

蕁麻疹は、突然現れるかゆみや皮膚の赤い盛り上がりが特徴の皮膚疾患です。発症のきっかけとして、食べ物や薬、ストレス、気温の変化など様々な原因があります。

この記事では、蕁麻疹の原因をおとなと子ども別に解説し、対処法や予防のポイントを紹介します。

蕁麻疹とは?突然現れるかゆみと赤い発疹の特徴と原因

蕁麻疹は、皮膚の一部が突然赤く盛り上がり(膨疹:ぼうしん)、数十分から1日で消える病気です。多くの場合、強いかゆみを伴います。

通常は数十分から数時間以内に跡を残さず消えますが、症状が強い場合は新しい膨疹が次々と現れ、長く続くこともあります。

膨疹の形や大きさには個人差があり、円形・線状・地図状など、その現れ方は様々です。小さな点状のものから体の広い範囲に広がるケースも見られます。

多くの場合、跡を残さず消えるのが蕁麻疹の大きな特徴です。しかし、原因が特定できないまま、症状が出たり消えたりを長期間繰り返す『慢性化』の状態になることもあります。

また、蕁麻疹は、食べ物や薬、ストレス、温度変化など体の内外からのさまざまな刺激が原因となることがあります。

蕁麻疹はなぜ起こる?メカニズムと主な原因を詳しく解説

蕁麻疹は、皮膚の中にある免疫反応が過剰に働くことで起こります。体の状態や外からの刺激によってこの反応が引き起こされ、発疹が一時的に現れたり消えたりを繰り返すのが特徴です。

その刺激の原因は多岐にわたります。ここでは、蕁麻疹の仕組みと主な原因を詳しく解説します。

蕁麻疹の発症メカニズム|ヒスタミンがかゆみと赤みを引き起こす

蕁麻疹は、皮膚の小さな血管が一時的に広がることで生じます。血管の変化に関係しているのが、免疫に関わる「肥満細胞(マスト細胞)」です。マスト細胞は、皮膚の血管の周りにあり、体内に侵入した原因物質や刺激に反応してヒスタミンを含む顆粒を放出します。

ヒスタミンには、血液中の成分の一部を血管の外に漏れやすくしたり、かゆみと関係している神経に影響を与えたりといった作用があります。そのため、血管が膨らみ、かゆみを伴う赤い膨疹が生じるのです。

これらの反応は一時的なもので、数時間以内に自然に消えることも多いですが、原因となる物質や環境に触れることが続いたり体質的に反応しやすかったりする場合は、繰り返し発症する場合があります。

蕁麻疹の原因になる主な要因とは?

蕁麻疹の原因は一つではなく、体の外からの刺激と内側の状態が複雑に関わって起こります。

食べ物や薬などの物理的刺激に加え、気温の変化、ストレス、疲労、ホルモンバランスの乱れなども誘因となります。また、風邪などの感染症に伴って発症することも少なくありません。

蕁麻疹の原因になる主な例

食品魚介類(サバ、マグロ、サンマ、エビ、カニなど)
肉類(豚肉、牛肉、鶏肉など)
卵、乳製品(鶏卵、牛乳、チーズなど)
穀類・野菜(大豆、小麦、ソバなど)
その他食品添加物など
薬剤抗生物質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の解熱鎮痛薬(アスピリンなど)、造影剤、咳止めなど
感染症ウイルス、細菌、寄生虫、真菌(カビ類)による感染症
植物・昆虫イラクサやゴムなどに触れる、蜂に刺される
物理的刺激皮膚の摩擦、寒冷、温熱、日光、振動など
ホルモン変動月経、妊娠、更年期など
その他発汗、ストレス、疲労、内臓疾患など

蕁麻疹は複数の要因が重なって起こることも多く、原因を一つに絞り込みにくい場合もあります。

蕁麻疹の原因による種類の違い

蕁麻疹には、原因や発症のきっかけによって様々な種類があります。

特発性の蕁麻疹

明らかな原因を特定できないにもかかわらず、皮膚に膨疹が出るタイプの蕁麻疹です。症状はほぼ毎日のように現れ、繰り返し出たり消えたりします。医療機関を受診する蕁麻疹の中で最も多いタイプです。

こうした蕁麻疹は発症してからの期間によって「急性」と「慢性」の2つに分類されます。それぞれの特徴をご紹介します。

蕁麻疹の種類蕁麻疹の特徴
急性蕁麻疹最初の症状が出てから1ヶ月以内の蕁麻疹。特に子どもで、細菌やウイルスなどによる感染症が原因になることが多い。
慢性蕁麻疹最初の症状が出てから1ヶ月以上経過した蕁麻疹。夕方から夜にかけて症状が出ることが多い。

刺激誘発型の蕁麻疹

特定の刺激が加わったときにだけ症状が出るタイプの蕁麻疹です。多くは数十分から数時間で自然に消えます。刺激の強さや頻度によって、1日に何度も出ることもあれば、数日から数ヶ月出ないこともあります。

蕁麻疹の種類蕁麻疹の主な原因蕁麻疹の特徴
アレルギー性蕁麻疹食品、薬剤、植物、昆虫の毒素など・原因物質に触れてから数分〜数時間で発症。
・アナフィラキシーを伴うこともある。
物理性蕁麻疹皮膚の摩擦、寒冷、温熱、日光、振動など・外的刺激により膨疹が出る。
コリン性蕁麻疹発汗を促す刺激(運動・入浴・精神的緊張など)・小児〜30代前半に多い。
・1〜4mmの細かい膨疹と強いかゆみ。
アスピリン蕁麻疹アスピリンを含むNSAIDs、人工着色料、防腐剤など・摂取後数分〜数時間で発症。
・慢性蕁麻疹を悪化させることもある。
接触蕁麻疹塗り薬など、特定の物質に皮膚や粘膜が直接触れる・接触部位に一致して膨疹が出る。
・非アレルギー性のものを指す

おとなと子どもで異なる蕁麻疹の原因

蕁麻疹は、年齢によって原因や誘因が異なる場合があります。
ここでは、おとなと子どもにおける蕁麻疹の原因の違いを解説します。

おとなの蕁麻疹はストレスや睡眠不足が主な原因

おとなの蕁麻疹は、精神的ストレスや睡眠不足、疲労の蓄積などにより悪化しやすいことが特徴です。

食べ物や物理的刺激など、原因が明確な蕁麻疹ではストレスの影響は少ないとされています。一方で、慢性蕁麻疹ではストレスが悪化の原因となるケースが多く見られます。

また、月経周期や更年期に伴うホルモン変動も症状を悪化させることがあります。

子どもの蕁麻疹は感染や食物アレルギーが主な原因

子どもの蕁麻疹は、細菌やウイルスによる上気道などの感染症が原因で起こることが多いです。この場合は、体調が回復すると自然に改善するケースがほとんどです。他には、卵・牛乳・小麦・ナッツなどの食物アレルギーが関係している場合もあります。

短期間で同じ症状を繰り返すときは、小児科で相談しましょう。

蕁麻疹の原因にかかわらずできる対処法

蕁麻疹の原因は様々ですが、基本的な対処法は変わりません。ただし、原因が明らかな時は、まずその原因を避けるようにしましょう。対処法の基本をご紹介します。

①発疹が出たときはまず冷やす

蕁麻疹が出たときは、かゆみや腫れのある部分を冷やすと症状が和らぎます。タオルで包んだ保冷剤などを使い、やさしく冷やすことで血管の拡張が抑えられ、かゆみが落ち着きます。

ただし、寒冷刺激による蕁麻疹が疑われる場合は、冷やすと悪化する場合があるため注意が必要です。冷やさず安静にしましょう。

②掻かない・刺激を与えない

蕁麻疹が出たときは、掻かずに皮膚への刺激を避けることが大切です。掻くと炎症が悪化し、さらにかゆみが強くなる悪循環を招きます。

ゆったりした綿素材の衣服に着替え、肌をこすらないよう注意しましょう。入浴時はぬるめのお湯にし、やさしく洗うのがポイントです。

③症状が続くときは皮膚科・アレルギー科で原因を確認する

蕁麻疹の症状が数日以上続いたり、繰り返し出たりする場合は、早めに皮膚科やアレルギー科を受診して原因を特定しましょう。医師の問診や血液検査により、食べ物・薬・ストレスなどの誘因を確認できます。

自己判断で市販薬を使い続けるよりも、治療を受けたほうが再発を防ぎやすくなります。

蕁麻疹を繰り返さないためには?原因を避ける対策と予防法

蕁麻疹を繰り返す場合、日常生活の中にある原因をできるだけ取り除くことが大切です。今日から実践できる、再発を防ぐための4つの予防法をご紹介します。

①ストレスと睡眠のバランスを整える

ストレスや睡眠不足は、蕁麻疹を悪化させる大きな要因です。十分な睡眠と休息を取り、リラックスできる時間をつくることが、再発予防につながります。

かゆみを抑えてゆっくり眠るためには、医療機関での適切な治療と自宅でのスキンケアを合わせて行うことも大切です。

②皮膚を刺激しない生活習慣

蕁麻疹は、摩擦や圧迫などの刺激で悪化することがあります。締め付けの強い衣類や化学繊維は避け、肌にやさしい綿素材を選びましょう。

汗をかいたときは早めにシャワーで洗い流し、乾燥する季節は保湿を心がけることで再発のリスクを減らすことができます。

③食事と体調管理で免疫機能を整える

規則正しい食事や生活習慣は、体の本来の免疫機能を高めてくれます。バランスの良い食事を心がけ、日々の体調管理を意識的に行いましょう。

特定の食品で症状が出る場合は自己判断せず、医師の指導のもと避けるようにしてください。

④月経周期にも注意

女性は、月経前後などホルモンバランスが変化する時期に蕁麻疹が悪化することがあります。体調や肌の変化を記録しておくと、症状のパターンを把握しやすくなります。

周期的に症状が出る場合は、皮膚科やアレルギー科、婦人科に相談して対処法を見つけましょう。

蕁麻疹の原因がわからないときは?受診の目安を解説

蕁麻疹は一見軽症に見えても、原因によっては重症化する場合があります。原因がわからなくても、膨疹が広がる、呼吸が苦しい、発熱を伴うなどの症状があるときは、早めの受診が大切です。

①救急車を呼ぶべき危険な症状

以下の症状が出た場合は、アナフィラキシーショックの可能性があります。

  • 息苦しさを感じる
  • のどが塞がるような感じがする
  • 意識がもうろうとする
  • 血圧の低下が見られる

迷わず救急車を呼び、横になって安静を保ちましょう。

②できるだけ早く救急外来や診療所を受診する症状

以下の症状の場合も、注意が必要です。

  • 蕁麻疹が急に全身へ広がる
  • 強いかゆみや腫れが長く続く
  • 発熱、嘔吐、腹痛、下痢などの全身症状を伴う。

我慢せずに、早めに救急外来や医療機関を受診しましょう。

③皮膚科・アレルギー科・内科を受診すべき症状

以下の場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。

  • 症状が2日以上続く
  • 原因がわからないのに何度も繰り返す
  • ハチに刺された後に腫れ・発熱がある

皮膚科・アレルギー科・内科などで原因を特定し、再発を防ぐ治療を受けましょう。

【FAQ】蕁麻疹の原因や症状に関するよくある質問

蕁麻疹は原因や症状の現れ方が人によって異なるため、日常生活の中で以下のような疑問を感じる方もいるでしょう。

  • 蕁麻疹が全身に突然出る原因は?おとなに多いのはなぜ?
  • 蕁麻疹は自然に治る?放置するとどうなる?

蕁麻疹の正しい理解と早めの対処につなげるため、これらの疑問にお答えします。

蕁麻疹が全身に突然出る原因は?おとなに多いのはなぜ?

全身に蕁麻疹が出るのは、食べ物・薬・ストレスなどが原因で体全体にアレルギー反応が起こるためです。特におとなでは疲労やストレスが重なり、急に全身へ広がるケースがあります。

蕁麻疹は自然に治る?放置するとどうなる?

軽い蕁麻疹は自然に治ることもありますが、皮膚症状が半日経っても引かない場合や、何度も繰り返す場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

アナフィラキシー症状(呼吸困難、声のかすれ、強い腹痛や嘔吐など)がなければ、救急搬送は原則不要です。

蕁麻疹の原因を理解し、早めの受診と予防で再発を防ぐ工夫を

蕁麻疹の原因は人によって異なり、食事や気温の変化など、身近なものがきっかけになることがあります。おとなではストレスや睡眠不足、子どもでは感染やアレルギーが原因になることが多く、年齢によって傾向が異なります。

症状が繰り返し現れたり、長引いたりする場合は、医療機関で原因を確認することが大切です。

また、蕁麻疹は、適切なケアを行い、十分な休養とバランスの取れた生活を送ることで再発を防げる可能性があります。普段の生活を振り返って体や心に負担がかかっていないかを確認し、改善できそうな点があれば改善してみましょう。

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