
ヌーカラとは、治りにくい気管支喘息の治療に用いられる注射製剤です。喘息発作の回数を減らす効果を期待できます。期待する効果を得るには、適切な自己注射の方法の習得が重要です。本記事では、ヌーカラの効果や副作用、治療対象となる条件、自己注射の方法などを解説します。
ヌーカラとは|効果・作用のしくみ・治療対象となる条件

ヌーカラとは、治りにくい気管支喘息の治療に用いられる注射製剤です。気管支喘息とは、空気の通り道である気道に炎症が起きて狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。
ここからは、ヌーカラの効果と作用のしくみ、治療対象となる条件について解説します。
効果と作用のしくみ
ヌーカラは、喘息発作の回数を減らすことを目的とした治療薬です。喘息の重症化には、好酸球という細胞が関係しています。
好酸球は、寄生虫の感染から体を守る働きをする細胞です。しかし、血液や気道内で好酸球が必要以上に増えると、慢性的な炎症を引き起こし、喘息を重症化させる原因となります。
ヌーカラは、好酸球を活発にする物質を抑え、好酸球の数を減らします。その結果、喘息発作の回数を減らす効果が期待できます。
治療対象となる条件
ヌーカラの治療対象となるのは、主に以下のような条件を満たしている方です。
- 高用量の吸入ステロイド薬に加えて、複数の喘息の薬を併用している
- 喘息症状をコントロールできていない
- 血液中の好酸球の数が多い
ヌーカラは、現在使用している喘息の薬に追加して使用します。ヌーカラを注射すれば、他の薬が不要になるわけではありません。ヌーカラは、喘息以外にも以下のような病気に対して使用を検討されることがあります。
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎
慢性的な炎症によって鼻の中の粘膜が腫れ、ポリープができる副鼻腔炎のこと。見た目が茸のようになるため鼻茸(はなたけ)と呼ばれる。膿の混じった鼻水や粘性の鼻水、嗅覚の異常が特徴的な症状である。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう)とは、好酸球が異常に増え、血管に炎症が起きる病気のこと。喘息が先行して発症する場合が多い。血管の炎症に伴い、しびれや感覚障害などの症状が現れる。
ヌーカラの副作用と対処法
ヌーカラの副作用には以下のようなものがあります。
| 重大な副作用 | アナフィラキシー |
|---|---|
| その他の副作用 | 頭痛、注射部位の反応 |
それぞれの副作用について詳しく解説します。
重大な副作用
重大な副作用としては、アナフィラキシーがあります。アナフィラキシーとは、薬などアレルギーの原因が体内に入ることで、全身に激しい症状が出る反応のことです。血圧の低下や意識障害を伴う重篤な状態は、アナフィラキシーショックと呼ばれます。
以下のような症状が現れている場合は、アナフィラキシーの可能性があります。
- 意識障害
- 息切れ
- 息苦しさ
- 咳
- じんましん
- 発赤
- 皮膚のかゆみ
- 頭痛
- 吐き気
通常、注射後数時間以内に上記のような症状が現れます。しかし、数日遅れて現れることもあるため、投与後数日間は体調の変化に注意してください。
アナフィラキシーを疑う症状が見られる場合は、ヌーカラの使用を直ちに中断して、救急車を呼んでください。
その他の副作用
その他の主な副作用として多いのが、頭痛と注射部位の反応です。
注射部位の反応として、以下のような症状が現れることがあります。
- 痛み
- 赤み
- 腫れ
- かゆみ
- 熱感
- 出血
注射後にこれらの症状が現れた場合も、医師に相談してください。
ヌーカラの投与頻度と期間【スケジュール】

成人のヌーカラの投与頻度は以下の通りです。
| 対象の病気 | 投与量 | 投与頻度 |
|---|---|---|
| 気管支喘息 | 1回100mg(1箇所) | 1回あたり1本を4週間に1回 |
| 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 | ||
| EGPA | 1回300mg(3箇所) | 1回あたり3本を4週間に1回 |
EGPAに対しては、1箇所あたり100mgで3箇所に注射をします。具体的な投与期間は医師に確認してください。
ヌーカラ皮下注100mgペンの自己注射の方法
ヌーカラ皮下注100mgペンを自己注射する場合は、以下のような方法で行います。
- 注射部位を確認する
- 注射製剤を用意し周囲の環境を整える
- 注射を打つまでの準備をする
- 手順に沿って注射をする
- 片付けと記録をする
それぞれの手順について詳しく解説します。
1.注射部位を確認する
注射部位は上腕、腹部、太ももから選択します。上腕は、本人以外の介助者が注射する場合に選択します。
注射部位に関する注意点は以下の通りです。
- 同じ箇所には繰り返し注射しない
- 皮膚に傷や赤み、硬さなどがある部位には注射をしない
- 腹部はおへそから約5cm以上離した部位に注射をする
EGPAに対する3本の注射をする場合は、他の注射部位と5cm以上は離すようにしてください。
2.注射製剤を用意し周囲の環境を整える
次は以下のように注射をする環境と注射製剤を準備します。
環境の整備
- 明るい場所を確保する
- 注射を置く机をアルコールスプレーなどで拭く
- 石けんで手をよく洗う
注射の準備
- ヌーカラ皮下注100mgペンを冷蔵庫から取り出す
- 箱から出して室温で30分以上待つ
- アルコール綿と廃棄袋を用意する
気管支喘息または鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎であれば注射は1本、EGPAに対しては3本必要です。なお、透明の針キャップは注射の直前まで外してはいけません。
3.注射を打つまでの準備をする
以下のように注射を打つ直前までの準備をします。
- 薬液窓から薬液があるか確認する
- 注射部位をアルコール綿で拭く
- 透明の針キャップを外す
ここまでが打つ直前までの準備です。薬液に濁りや小さなつぶ(粒子)が見られる場合は使用しないでください。消毒した部位に再度手が触れないように注意しましょう。ヌーカラ皮下注100mgペンは、使用前に振る必要はありません。
また、手が冷たい場合はお湯などで温めてください。手が冷えていると薬液の冷たさが刺激となり、痛みや注射部位の反応が起きるおそれがあります。さらに、指先がかじかむことで正確に手指を動かせなくなり、適切な注射が難しくなることもあります。
4.手順に沿って注射をする
以下の手順に沿って注射をします。
- 薬液窓が見えるようにペン本体を持つ
- 注射部位に対して直角になるように黄色の安全カバーを軽く当てる
- 注射部位に黄色の安全カバーが見えなくなるまで深く押し当てる
- 「カチッ」という音が鳴ると薬液の注入が始まるため、注入完了まで15秒ほど押し当てる
- 薬液の注入が完了すると鳴る「カチッ」という音を聞き、薬液窓が黄色に変わっていることを確認する
- 注入終了後は、5秒ほど経過したら黄色の安全カバーを注射部位から離す
- 注射部位をアルコール綿で軽く抑える
- アルコール綿を外して、血が出ていなければ注射終了となる
皮下脂肪の少ない方は、利き手とは反対側の手で軽く注射部位をつまみ、針が深く刺さりすぎないようにします。注射部位をつまんで打つ場合は、指に針が刺さらないように注意してください。
途中で注射部位から本体を離してしまうと適切に薬液が注入されません。薬液の注入中は、黄色の安全カバーを注射部位から離さないようにしてください。
5.片付けと記録をする
注射が完了したら片付けと記録をします。
注射は以下のように廃棄してください。
- ヌーカラ皮下注100mgペンを廃棄袋に入れて医療機関の指示通りに捨てる
- 針キャップは本体に取り付けずに廃棄袋に入れる
なお、ヌーカラ皮下注100mgペンは、使い捨てであるため再利用しないでください。
記録は「注射を始めた日」「注射した日」「トラブルなく注射ができたか」「その日の体調」などを記載しましょう。副作用や体調不良の早期発見に役立ちます。受診の際は記録帳を持参してください。
ヌーカラの使用と保存における注意点
ここからはヌーカラの使用と保存における注意点を解説します。
使用における注意点
ヌーカラは現在使用中の喘息の薬と一緒に使うことで、症状の改善が期待できます。処方されている薬の吸入・服用は続けてください。また、ヌーカラは継続して使用する必要があります。症状が改善したからといって自己判断で中断しないでください。
保存における注意点
ヌーカラ注射製剤を保存する際は以下に注意してください。
- 箱のまま冷蔵庫に保存する
- 冷蔵庫から取り出した場合は、箱のまま30℃以下で保存して7日以内に使用する
- 高温多湿の場所や直射日光に当たる場所には置かない
万が一、硬い場所に落としてしまった場合は使用を控えましょう。
ヌーカラの値段と自己負担額
ヌーカラの値段と自己負担額は以下の通りです。
| ヌーカラ 皮下注100mgペン/皮下注100mgシリンジ | |
|---|---|
| 値段 | 159,891円 |
| 3割負担 | 47,967円 |
| 2割負担 | 31,978円 |
| 1割負担 | 15,989円 |
ヌーカラに利用できる医療補助制度

ヌーカラは高額な薬剤です。
以下の医療補助制度を利用できる場合は有効活用しましょう。
医療費控除
1〜12月の1年間の医療費が10万円を超える場合、確定申告を行うと所得税の控除が受けられる制度。対象となる医療費は生活費を共有している家族内までに限る。
高額医療費制度
医療機関や薬局で支払った額が1カ月の自己負担限度額を超えた際、超えた金額の払い戻しが受けられる制度。自己負担限度額は所得によって設定される。
付加給付制度
健康保険組合や共済組合が独自に設けている給付制度。自己負担限度額を超えた分の払い戻しが受けられる。
ヌーカラに関するよくある質問
ヌーカラに関して以下のような疑問が生じていませんか?
- Q.効果はいつから現れる?
- Q.治療はいつまで続ける?
- Q.注射は痛いですか?
- Q.予定より多く注射してしまった場合はどうすればよい?
- Q.自己注射に失敗した場合はどうすればよい?
- Q.打ち忘れた場合はどうすればよい?
それぞれの質問について解説します。
ヌーカラは、喘息発作の回数を減らすことを目的とした治療薬です。喘息発作は毎日のように起きるものではないため、患者さんが効果を実感できるまでに時間を要する場合があります。治療の経過に関しては適宜医師に確認しましょう。
ヌーカラの投与期間は、一概にはっきりとは言えません。治療をいつまで続けるかは医師に確認しましょう。
針が細いため、通常の採血やワクチンよりも痛みは少ないと感じる方が多いです。お腹や太ももなど脂肪の多い部分は痛みが少ないとされています。
予定よりも多く打ってしまった場合は医師に連絡してください。副作用が現れていないかも確認しましょう。
「途中で針を抜いてしまった」「すべての薬液を注入できなかった」場合は、医師に連絡して指示を受けてください。使用した注射製剤は再利用せず、新たに自己判断で追加投与もしないでください。また、使用した注射製剤は手元に保管し、状況を説明できるようにしておきましょう。
打ち忘れた場合は医師に相談してください。2回分を一度に注射しないでください。
ヌーカラは医師の指示のもと正しく使用しよう

ヌーカラは治りにくい気管支喘息の治療に用いる注射製剤です。喘息発作の回数を減らす効果を期待できます。喘息以外にも、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎やEGPAなどに使用されます。
副作用としてはアナフィラキシーや注射部位の反応などがあります。意識障害や息切れ、じんましんなどの症状が現れた場合は、アナフィラキシーを疑い、救急車を呼んでください。
喘息に対するヌーカラの投与頻度は、4週間に1回、100mg(1本)です。自己注射の方法は看護師の指導を聞きながら習得してください。症状が改善したからといって、自己判断で中断をしてはいけません。医師の指示通りに注射をして適切な治療を受けましょう。
ヌーカラの診療に関して
ヌーカラ注射のご相談(継続処方)をご希望の方は、必ず川崎駅東口内科クリニック・アレルギー科・小児科の呼吸器内科の診療日にご来院ください。
※詳しい診療日は「担当医表」をご確認のうえ、ご予約・ご来院をお願いいたします。
- ヌーカラの新規導入について
当院では、ヌーカラの新規導入は行っておりません。 - 他院から転院し、継続処方をご希望の方へ
現在、他院でヌーカラを使用中で、当院での継続処方をご希望の方は、前医からの「紹介状(診療情報提供書)」を必ずご持参ください。
※過去の検査結果や治療経過を確認することで、スムーズな継続が可能となります。
当院ではLINEによる診療予約を導入しております。
LINEから予約のキャンセル・変更も可能です。
LINE予約で問診票もご記入いただけますので、ぜひご利用ください。