コラム

夜尿症とは?おねしょする子の特徴や原因、治療方法、接し方を解説

夜尿症とは5歳を過ぎても睡眠中に尿失禁が続いている状態のこと。夜尿症は無理に起こしたり怒ったりしないで、子どものペースで改善していくことが大切です。本記事では、夜尿症の概要や原因、治療方法などを解説します。夜尿症の子どもに対する接し方や改善方法も解説しているため参考にしてください。

夜尿症(お漏らし)とは

夜尿症とは、「5歳を過ぎても1ヵ月に1回以上の睡眠中の尿失禁が3ヵ月以上続いている状態」のことをいいます。一般的に5歳ごろには改善しますが、5歳を過ぎても以下のような割合で夜尿症が続く場合があります。

年齢夜尿症が残る割合
5歳〜15〜20%
10歳〜5〜10%
15歳〜1〜2%
成人〜0.5%

夜尿症は、200人に一人の割合で完全になくならないとされています。

 【おねしょする子の特徴】夜尿症の5つの原因

夜尿症の原因ははっきりと解明されていませんが、以下のような理由が原因と考えられています。

  • 睡眠から目覚めにくい
  • 夜間の尿を溜める能力に問題がある
  • 夜間尿量が多くなってしまう
  • 発達のペースに個人差がある
  • 両親に夜尿症の既往歴がある

それぞれの詳細を解説します。

1.睡眠から目覚めにくい

夜尿症の患者さんは、膀胱に尿がたまっても睡眠から覚醒しにくい傾向です。これらはよく眠っているというわけではなく、睡眠の質が悪いとされています。一方、深い睡眠状態であるノンレム睡眠の時に尿失禁が見られるという報告もあります。

2.夜間の尿を溜める能力に問題がある

以下のように尿を溜める能力に問題があると夜尿症の原因になります。

  • 膀胱の容量が小さい
  • 一定量の尿がたまると勝手に膀胱が収縮してしまう

その他にも、排尿をコントロールする骨盤底筋(こつばんていきん)が活動しないことも、夜尿症をきたす原因とされています。

3.夜間尿量が多くなってしまう

夜間の尿量が多いことも夜尿症の原因です。これは、睡眠中の尿量を減らす抗利尿ホルモンの分泌が少ないことが原因です。その他にも「水分の摂り過ぎ」「カフェインの摂取」なども原因になります。

4.発達のペースに個人差がある

夜尿症の背景には、中枢神経系の機能がまだ十分に発達していないことが関係しているケースがあります。一般的には発達とともに、睡眠中に尿が溜まったことを知覚できるようになり、膀胱の収縮も抑制できるようになります。

5.両親に夜尿症の既往歴がある

夜尿症は両親からの遺伝が関係していると考えられており、以下のような報告があります。

両親の既往による夜尿症のなりやすさ

両親のどちらかが夜尿症であった場合約5〜7倍
両親のどちらもが夜尿症であった場合約11倍
出典:日本夜尿症学会 夜尿症診療ガイドライン2021

その他にも、何らかの精神的な問題も夜尿症の原因となるという意見もありますが、明確なエビデンスは乏しい状況です。

夜尿症の診断

日本夜尿症学会の夜尿症診療ガイドライン2021によると、夜尿症は以下のように定義されています。

  • 5歳以上の子どもの睡眠中に一定の間隔で尿失禁が起こったり止まったりする
  • 夜尿症以外の排尿障害が関係しない
  • 1ヵ月に1回以上の頻度で睡眠中の尿失禁が3ヵ月以上続く

1週間に4日以上の頻度で睡眠中の尿失禁がある状態を「頻回」、3日以下は「非頻回」と定義されています。夜間の尿失禁だけでなく、昼間に尿失禁をしたり発熱を起こしたりする場合は、何らかの排尿障害の可能性があります。このような場合は、小児の病気に詳しい泌尿器科の医師に相談しましょう。

夜尿症の治療方法

夜尿症には、以下のような治療方法があります。

  • 薬物療法
  • アラームトレーニング

それぞれの詳細を解説します。

1.薬物療法

夜尿症の薬物療法には、以下のような薬があります。

薬の名前詳細
デスモプレシン夜間に尿量を減らす役割がある抗利尿ホルモンを補うことができる内服薬。抗利尿ホルモンの分泌が低下している場合に効果を期待できる。内服をやめると元に戻ることが多いが、学校などのお泊まり行事の際に活用できる。
抗コリン薬膀胱の収縮を抑制する内服薬。膀胱に溜められる尿量の増加を期待できる。一般的に単独では効果がないため、デスモプレシンや後述するアラームトレーニングと併用して使用する。

2.アラームトレーニング

夜尿症のアラームトレーニングとは、尿失禁をするとアラーム音がなるセンサーを装着して尿失禁をした際に起こしてもらう方法です。アラームをならさないように寝ようとする意識を付けることで夜尿症の改善が期待できます。

日本で多く使用されているのは「ピスコール」という製品です。豊富なメロディやバイブレーションで目覚めにくい子どもが起きられるように工夫されています。

おねしょする子への接し方や改善の方法

夜尿症は成長とともに改善していきます。その間は自然に治るものとして「起こさない」「怒らない」「焦らない」の3原則で見守ってあげましょう。また、夜尿症を改善するには、以下のように生活習慣を見直すことも大切です。

  • カフェインを含む飲み物をやめる
  • 昼間に十分な水分を取り6回以上トイレに行く習慣をつける
  • 就寝2〜3時間前は水分を取り過ぎない
  • 寝る前にトイレに行く

小学校低学年になっても、頻度が減らない場合は医師に相談してみましょう。

夜尿症は叱らずに子どものペースで改善を目指しましょう

夜尿症は5歳を過ぎても睡眠中の尿失禁が続くこと。夜尿症の治療には、生活習慣の改善や薬物療法、アラームトレーニングなどがあります。

治療中にたとえ尿失禁が見られても、叱らずに子どものペースで改善を目指すことが大切です。また、夜間以外に尿失禁が見られる場合は、なんらかの排尿障害の可能性があります。そのような場合は医師に相談してください。

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