コラム

みずぼうそうの子どもとおとなの症状|初期症状や出席停止の基準を解説

みずぼうそうとは、皮膚に小さな赤みやブツブツ、水ぶくれなどが現れる感染症です。主に、9歳以下の子どもに発症します。おとなが発症すると重症化する恐れもあるため注意が必要です。本記事では、みずぼうそうの概要から子どもとおとなの初期症状の違いなどを解説します。

みずぼうそうとは小さな赤みや水ぶくれの発疹が特徴的な感染症

みずぼうそうとは、かゆみをともなう発疹が全身に現れる感染症です。発疹とは、体の表面に現れる小さな赤みやブツブツ、水ぶくれなどのことです。水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。

みずぼうそうは子どもを中心に感染する病気です。実際に、発症の割合は90%以上が9歳以下の子どもとの報告があります。15歳以上の発症は1%以下であり、まれです。

ときに重症化することがあり、肺炎や気管支炎、髄膜炎、脳炎などを引き起こすことがあります。おとなのみずぼうそうの発症もまれにあり、子どもよりも重症化する傾向があります。

みずぼうそうの感染経路と潜伏期間

みずぼうそうは、感染から約2週間の潜伏期間を経て発症します。感染経路は以下の通りです。

感染経路詳細
接触感染水ぶくれや粘膜の排出物に触れることによる感染
飛沫感染咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる感染
空気感染咳やくしゃみの飛沫が乾燥して、空気中に漂う粒子を吸い込むことによる感染

みずぼうそうの子どもの初期症状と進行後の症状

子どもの初期症状は一般的に発疹です。発疹はかゆみをともなう複数の小さな赤みから出現して、ブツブツ、水ぶくれ、痂皮化(かひか:かさぶたのこと)の経過をたどります。

発疹は、以下の順番で出現し全身に広がっていきます。

  1. 頭皮
  2. 胴体全体
  3. 腕や足

みずぼうそうの発疹は特に胴体に多く見られ、数日にわたり次々と出現します。そのため、水ぶくれや痂皮化したものが混在している状態になります。

体中の小さな発疹に加えて、発熱、不機嫌、食欲不振などの症状が現れた際は、みずぼうそうを疑ってください。子どものみずぼうそうは一般的に軽症です。多くは、発疹のほかに2〜3日続く38度ほどの発熱や体のだるさが現れる程度です。

みずぼうそうのおとなの初期症状と進行後の症状

おとなの場合は、発疹が出現する前に1〜2日続く発熱と体のだるさが初期症状として現れます。発熱、体のだるさ、水ぶくれなどの症状が、子どもと比較して重くなりやすい傾向です。また、合併症である肺炎が出現しやすいことも、おとなのみずぼうそうの特徴です。

みずぼうそうによる肺炎は、子どもの場合はまれです。一方、おとなの場合は16〜50%に肺炎が見られるとの報告があります。おとなのみずぼうそうが重症化する原因には、発見が遅れてしまうことなどが挙げられます。

みずぼうそうの合併症

みずぼうそうの合併症には、以下のようなものがあります。

合併症特徴
二次性細菌感染・水ぶくれの部分にみずぼうそうとは別の感染症が起きること
・かゆみにより水ぶくれの部分を引っ掻くことで起こる
肺炎・みずぼうそうのウイルスが肺に侵入して起こる炎症
・高熱や咳、痰、息苦しさ、胸の痛みなどの症状が現れる
気管支炎・みずぼうそうのウイルスが気管支に侵入して起こる炎症
・発熱や咳、痰、鼻水などの症状が現れる
脱水・体に必要な水分が不足している状態
・口の中の水ぶくれの痛みで水分が摂りづらくなることや発熱による発汗が原因
無菌性髄膜炎・脳や脊髄を保護している膜にウイルスが侵入して起こる炎症
・発熱や頭痛、嘔吐(おうと:吐くこと)などの症状が現れる
脳炎・脳にみずぼうそうのウイルスが侵入して起こる炎症
・高熱や頭痛、嘔吐、けいれん、歩行障害などの症状が現れる

子どもがみずぼうそうで重症化する場合は、肺炎や気管支炎などの合併症によるものが多いです。

みずぼうそうの治療方法

みずぼうそうは、症状が軽い場合は7〜10日で自然治癒が期待できます。治療をする場合は、子どももおとなも抗ウイルス薬(ウイルスの増殖を抑える薬)を内服します。

抗ウイルス薬を内服すると、症状が改善されて、発疹の痂皮化が期待できます。発疹が現れてから48時間以内に内服を始めると効果が高いとされています。重症の場合は抗ウイルス薬の点滴が必要です。

その他には、かゆみに対してはかゆみ止めの塗り薬、発熱に対しては解熱剤など、症状に合わせて治療を行います。

みずぼうそうの自宅療養の5つのポイント

子どもが自宅療養をする際の5つのポイントは、以下の通りです。

  1. 子どもの様子をよく見る
  2. 水ぶくれは潰さない
  3. こまめに水分補給をする
  4. できるだけ安静に過ごす
  5. 体の清潔を保つ

それぞれの詳細を解説します。

1.子どもの様子をよく見る

以下のような項目を参考にして、子どもの病状が悪くなっていないかを確認しましょう。

  • 体温が急激に上がっていないか
  • 夕方から夜にかけて高熱が出ていないか
  • 顔色が悪くなっていないか
  • ぐったりしている様子はないか
  • 食事や水分は十分に取れているか
  • 尿の量が普段より少なくないか
  • 尿の色が濃くなっていないか

発熱があるときは、1日3回(朝・昼・夕)体温を測定してください。「高熱が続いている」「子どもがぐったりしている」「顔色が悪くなっている」などの場合は、病状が悪化している恐れがあります。医療機関を受診してください。

2.水ぶくれは潰さない

水ぶくれを潰してしまうと、発疹の悪化や二次性細菌感染を引き起こす恐れがあります。かゆみにより引っ搔いてしまうことがないように、爪を丸く切り清潔にしましょう。

「発疹がある部分に包帯を巻く」「大きめの長袖のTシャツを着せる」などの対策も有効です。赤ちゃんの場合は手袋を着用するなどの対策があります。

3.こまめに水分補給をする

みずぼうそうは、口の中の水ぶくれの痛みで水分などが摂りづらくなることや発熱による発汗によって、脱水症状を引き起こすリスクがあります。

以下のようなもので、こまめに水分を摂るようにしてください。

  • 経口補水液
  • 乳幼児用イオン飲料
  • 麦茶
  • 湯冷まし
  • 野菜スープ

食事内容はいつも通りで問題ありませんが、口の中に水ぶくれなどが現れている場合や食欲がないときは、おかゆやうどん、ポタージュスープ、離乳食などの消化が良く飲み込みやすいものにしましょう。刺激の強い酸っぱいものや辛いものは避けてください。

4.できるだけ安静に過ごす

自宅療養においては、できるだけ安静に過ごすことが大切です。とはいえ、無理に寝かせようとするのは避けたほうが良いでしょう。無理に寝かしつけようとすると、かえって寝てくれないことがあるためです。体が楽になるまで抱っこや添い寝をしてあげると良いでしょう。

また、以下のようなポイントを押さえて、できるだけ快適に過ごせるようにしてあげましょう。

快適に過ごすためのポイント詳細
部屋の環境を整える・室温は暑すぎず寒すぎず、おとなが快適と感じる程度に調整する
・部屋は乾燥しないように、ぬれタオルを部屋にかけるなどで湿度を調整する
衣類を調整する・熱が高いときは厚着をしない、布団をかけすぎない
・背中に汗をかいている場合は、服の着せすぎ、または布団のかけすぎである

5.体の清潔を保つ

二次性細菌感染を予防するためにも、体は清潔にする必要があります。とはいえ、発熱などの症状がひどいときは、無理に入浴する必要はありません。

蒸しタオルで体を拭いたり、こまめに着替えさせたりなどの対応をとります。タオルで体を拭く際は、水ぶくれが潰れてしまうためゴシゴシこすらないようにしてください。熱が下がり元気が出てきたら、シャワーを浴びると良いでしょう。

みずぼうそうを疑い受診する際に医師へ伝えたいポイント

子どものみずぼうそうを疑い受診をする際は、以下のことを伝えると治療がスムーズになります。

  • 発疹はいつ・どこから現れたか
  • かゆみはあるか
  • 発熱はいつからか
  • 体温が上がったり下がったりしているか
  • 発疹や発熱以外の症状があるか
  • 使用している薬はあるか
  • これまでどのような予防接種をしてきたか
  • 水分や食事は十分に摂れているか
  • 尿の量が減ったり色が濃くなったりしていないか
  • 家族や学校、保育園などで流行している感染症はあるか

おとなの場合は、みずぼうそうの発症歴やワクチン接種歴、子どもとの接触歴などを伝えてください。

みずぼうそうの主な予防方法はワクチン接種

みずぼうそうの主な予防方法はワクチン接種です。ワクチンを1回接種すれば、重症化をほとんど防げるとの報告があります。2回接種すれば、軽症のみずぼうそうおよび発症自体も予防できるとされています。

ワクチンの接種時期は以下の通りです。

ワクチンの接種時期詳細
1回目生後12~15カ月の間
2回目1回目接種の6~12カ月後

なお、家庭内での接触感染による発症率は90%との報告があります。子どもがみずぼうそうを発症した際は、水ぶくれに触れたあとの手洗いの徹底やマスクの着用などの感染対策をとりましょう。家族間でのタオルの共有も避けてください。

みずぼうそうの出席・登園停止の基準

みずぼうそうは、学校保健安全法の第2種の感染症に定められており、基本的には、すべての発疹が痂皮化するまでは出席・登園等を停止しなければなりません。ただし、学校医や医師が感染の恐れがないと判断したときは、出席・登園等が許可されます。

その他にも、出席・登園を停止する必要のあるケースをまとめました。

  • みずぼうそうを発症している家族のいる家に居住しているおよび感染の疑いのある方は、「予防処置を行う」または学校医や医師が感染の恐れがないと認めるまで出席・登園を停止する
  • みずぼうそうが発生した地域から通学する子どもは、学校医の意見を聞き必要な期間の出席・登園を停止する
  • みずぼうそうが流行した地域を旅行した子どもは、学校医の意見を聞き必要な期間の出席・登園を停止する

FAQ|みずぼうそうに関するよくある質問

ここからは、以下のようなみずぼうそうに関するよくある質問について解説します。

  • Q.みずぼうそうの跡を残さないようにする方法はある?
  • Q.おとなが感染した場合は仕事を休んだほうが良い?
  • Q.妊婦に感染するとどうなる?

それぞれの詳細を解説します。

みずぼうそうの痕を残さないようにする方法はある?

みずぼうそうの痕を残さないためには、可能なかぎり発疹のある部分を掻きむしらないことが大切です。掻きむしって感染が皮膚の深い所まで広がると、痕が残ってしまう恐れがあるためです。

おとなが感染した場合は仕事を休んだほうが良い?

法律等で定められているわけではありませんが、おとなもみずぼうそうを発症したら出勤を控えることが望ましいです。みずぼうそうのウイルスは感染力が強く、周囲に移すリスクがあるためです。とはいえ、就業規則は会社によって異なります。会社の上司や医師に相談しましょう。

妊婦に感染するとどうなる?

妊婦がみずぼうそうに初めて感染すると、流産や先天性水痘症候群(せんてんせいすいとうしょうこうぐん)のリスクが高まります。先天性水痘症候群とは、赤ちゃんに発達の遅れ等を引き起こす病気です。加えて、妊婦は重症化しやすい傾向にあります。

妊婦の感染または重症化を防ぐには、妊娠前のワクチン接種が挙げられます。なお、ワクチンを接種したあとは2カ月間の避妊が必要です。妊娠中または妊娠している可能性がある方は、ワクチンを接種することはできません。

みずぼうそうを疑う初期症状が現れたら受診を検討しよう

子どものみずぼうそうの初期症状は、体中の小さな発疹です。加えて、発熱や不機嫌、食欲不振などの症状が現れている場合は、みずぼうそうを疑ってください。

おとなのみずぼうそうの初期症状は、発疹が出現する前に現れる1〜2日続く発熱と体のだるさです。おとなの場合は気づきにくく重症化する恐れもあるため、みずぼうそうの発症歴やワクチン接種歴がない方、子どもと接触した覚えのある方は注意してください。

みずぼうそうの主な予防方法はワクチンの接種です。重症化を予防するためにも、接種時期に該当する場合は接種を検討してください。

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