コラム

手足口病の子どもと大人の症状|初期症状や登園・出席停止についても

手足口病は夏に子どもを中心に流行する感染症です。発疹を伴う感染症で、多くは軽症で自然治癒しますが、まれに髄膜炎や脳炎の合併症を引き起こすため注意が必要です。本記事では、手足口病の概要から感染経路、初期症状、注意すべき症状、子どもと大人の症状の違いなどを解説します。

手足口病とは水疱を伴う発疹が出る感染症

手足口病とは、手足や口に水疱(すいほう:みずぶくれ)を伴う発疹が現れる感染症です。多くは2歳以下の子どもに発症しますが、小学生にも流行することがあります。とはいえ、成人を含めて小学生以上の多くは、すでに感染したことがあるため手足口病を発症することは少ないです。

手足口病は夏に流行する病気で男児に感染が多い傾向。原因となるウイルスは、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスなどです。まれに髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎、心筋炎といった合併症を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。

また、口の中の痛みにより、水分補給が進まず脱水症を引き起こすこともあります。脱水症を防ぐために、無理のない範囲で少しずつ水分補給を促すことが大切です。

手足口病の感染経路

手足口病の主な感染経路は以下の通りです。

感染経路詳細
飛沫感染感染者の咳やくしゃみにより飛び散ったウイルスを口や鼻から吸い込んだり、目などの粘膜に付着したりすることで感染すること。
接触感染感染者が咳やくしゃみを手で押さえたあとに、その手を介して感染すること。ドアノブや手すりなどウイルスに汚染された物からも感染することもある。
経口感染(糞口感染)感染者の咳やくしゃみなどにより汚染された食べ物や、便などが口に入った際に感染すること。

手足口病は、年齢層の低い乳幼児が感染しやすいことから、保育園や幼稚園などで流行することがあります。子ども同士は生活距離が近く、濃厚接触することが多いため、集団感染が起こりやすい特徴があります。

手足口病は症状が現れてから、最初の1週間は感染力が強く周囲に広げるリスクが高いです。また、症状が消失したとしても、数日から数週間は感染する恐れがあるため注意が必要です。

手足口病の初期症状と注意すべき症状

手足口病は多くの場合に自然治癒しますが、合併症や脱水症を引き起こすこともあるため注意が必要です。ここからは、手足口病の初期症状と、合併症や脱水症に気づくために注意すべき症状を解説します。

感染してから3〜5日後に水疱を伴う発疹が現れる

手足口病は3〜5日後に初期症状として、口の中や手のひら、足の裏と甲などに2〜3cmの水疱を伴う発疹が現れます。発熱は約1/3の方に現れることがあり、ほとんどは38℃以下で高熱が続くことは基本的にありません。

ときに肘や膝、臀部などにも発疹が現れることがあり、口の中に小さな潰瘍(かいよう:深い傷のようなもの)が発生することもあります。多くの患者さんは、3〜7日のうちに治る病気です。

合併症が疑われる症状に注意する 

以下のような症状が現れている場合は、髄膜炎や脳炎、心筋炎などを引き起こしている恐れがあるため、速やかに医療機関を受診してください。

  • 高熱が出ている
  • 発熱が2日以上続いている
  • 嘔吐している
  • 頭痛を訴えている
  • 視線が合わせられない
  • 声をかけても反応がない
  • 呼吸が速い
  • 息苦しそうである
  • ぐったりしている
  • 水分補給ができない
  • おしっこが出ない

脱水症が疑われる症状に注意する

手足口病は、口の中の痛みにより水分補給が進まず、脱水症を引き起こすことがあります。以下のような症状が現れている場合は、脱水症を疑い速やかに医療機関を受診してください。

  • 活気がなくぼんやりしている
  • おしっこの回数や量が少ない
  • 口の中が乾燥している
  • 泣いたときの涙が少ない
  • 頭の上にある頭蓋骨の隙間がへこんでいる

子どもが口の中に痛みがある場合は「食べたり飲んだりしない」「いつもよりよだれが多い」「冷たい飲み物しか飲まない」などの様子が見られます。これらの様子が現れている場合は、水分補給が進まないためとくに脱水症に注意してください。

手足口病の合併症

手足口病は、重症化するとまれに以下のような合併症を引き起こすことがあります。

合併症概要
髄膜炎脳や脊髄を覆っている髄膜に炎症が起き、さまざまな症状を引き起こす病気。発熱や頭痛、嘔吐、首のこわばり、意識障害などの症状が現れる。
脳炎脳自体に炎症が起きる病気。髄膜炎と同様に発熱や頭痛、嘔吐、首のこわばり、意識障害などの症状が現れる。
心筋炎心臓を構成している筋肉に炎症が起きる病気。発熱やのどの痛み、下痢、胸の痛み、息苦しさ、意識障害などの症状が現れる。

手足口病の子どもと大人の症状の違い

子どもの手足口病は、一般的に軽い症状で自然治癒します。一方、大人の手足口病は、発症すると重度の皮膚症状を伴うことがあります。

大人の手足口病は、コクサッキーウイルスA6というウイルスが関連することが多いです。コクサッキーウイルスA6による手足口病は、頭皮や顔面、鼠径部付近、肛門、四肢の中枢側に以下のような皮膚症状が現れることがあります。

  • 発疹
  • 大きな水疱
  • びらん(皮膚や粘膜にできる浅い傷)
  • 潰瘍

これらの皮膚症状に伴い、手足のかゆみや足の裏の痛みなどを自覚することがあります。大人が発症する可能性は1%と少ないですが、子どもからウイルスをもらい感染することがまれにあります。そのため、手足口病を発症した子どもの世話をする方は、感染対策を十分に行いましょう。

手足口病とヘルパンギーナの違い

症状が似ている手足口病とヘルパンギーナの違いは以下の通りです。

手足口病ヘルパンギーナ
原因コクサッキーウイルス、エンテロウイルスコクサッキーウイルス、エコーウイルス
発症しやすい年齢2歳以下が多くを占める5歳以下が多くを占める
症状・口の中や手足、肘、膝、臀部に水疱を伴う発疹ができる
・38℃以下の発熱が現れる
・発熱に続き、喉に痛みや発赤が現れる
・口の中に水疱ができる
感染経路飛沫感染、接触感染、経口感染、糞口感染
予防方法有効なワクチンはない。手洗いやうがいを徹底する。

手足口病の治療方法

手足口病には特別な治療方法はなく、対症療法が中心です。基本的には軽い症状であるため、自宅で安静にして良くなるまで療養します。

発熱や痛みに対しては、解熱剤や鎮痛剤を用います。市販薬を使用する場合は、子ども用であるかをよく確認してください。口の中の痛みがある場合は、前述したとおり脱水症にならないよう十分に水分を摂る必要があります。

水分が足りないときは点滴を実施することもあります。「ぐったりしている」「声をかけても返答がない」などの様子が見られる場合は、何らかの合併症や脱水症に移行している恐れがあるため、速やかに医療機関を受診してください。

手足口病の予防方法

手足口病に有効なワクチンなどはありません。手洗いやうがいの徹底が基本的な対策です。年齢的に可能であればマスクも着用しましょう。

患者さんの家族だけでなく、保育園などの職員や子どもたち全員がしっかり手洗いとうがいをすることが大切です。オムツを交換したあとは、排泄物を適切に処理して、石鹸と流水でしっかりと手を洗ってください。タオルの共有も避けましょう。

また、発疹が消えたあとも3〜4週間は便にウイルスが含まれています。そのため、この期間もオムツなどの排泄物を適切に処理して、十分に手洗いを行う必要があります。

子どもが手足口病を発症した際の対応方法

子どもが手足口病を発症した際の対応方法は以下の通りです。

  • 摂取できそうなもので栄養と水分をとる
  • 室温や衣服を調整して安静にする

それぞれの詳細を解説します。

摂取できそうなもので栄養と水分をとる

口の中の水疱が破れると痛みにより食欲不振になる子どもが多いです。その結果、十分に栄養や食事を取れなくなる場合があります。口の中に痛みがある場合は、酸味が強いものや熱いもの、塩辛いものは避けてください。

プリンやゼリー、アイス、冷ましたおかゆ、豆腐など柔らかくてのどごしが良いものを食べさせましょう。水分は薄めのお茶や経口補水液、イオン飲料などを少しずつ何回も飲ませるようにしてください。

室温や衣服を調整して安静にする

手足口病は軽い発熱を伴うことがあります。療養しやすい環境にするために室温や衣服を調整してください。熱の出始めは、寒気やふるえなどが現れることがあります。その際は、1枚多く服を着させて体を温めてあげましょう。

反対に熱が上がりきると、暑がって汗をかき始めるため厚着をしないようにしてください。「38℃以上の高熱が出る」「発熱が2日続いている」場合は、合併症を引き起こしている恐れがあります。速やかに医療機関を受診してください。

手足口病の登園・出席停止の基準について

手足口病は学校保健安全法において、登園・出席停止の明確な基準は設けられていません。発疹の改善後、長期間にわたりウイルスが便などから排泄されるため、急性期の登園・出席を停止しても、効果的な感染拡大防止の対策にはならないためです。

また、多くの場合は軽症で自然治癒するため、発疹だけで長期間子どもを欠席させることは現実的ではないとしています。登園・出席の基準は、患者さんの症状や状態によって判断すればよいと考えられています。

手洗いの徹底とタオル共有は避けて手足口病を予防しよう

手足口病を発症しても、多くの場合は3〜7日で自然治癒します。しかし、髄膜炎や脳炎、心筋炎などの合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。「高熱が出ている」「嘔吐している」「息が苦しそう」などの症状が子どもに現れている場合は、速やかに医療機関を受診してください。

また、口の中の痛みにより水分を十分に取れないことがあるため「活気がない」「おしっこの量や回数が少ない」などの様子が見られた際は、脱水症を疑い医療機関を受診しましょう。

手足口病に有効なワクチンはありません。流行時期は、とくに手洗いやうがいなどの基本的な感染対策を徹底するようにしてください。

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