要約
2歳になるまでにほぼすべての子どもが感染する「RSウイルス」。多くはかぜ症状である一方で、乳児や小さく生まれた赤ちゃんの初感染では肺炎‧気管支炎により入院にいたるケースがあります。
いままで特段の予防策や治療はありませんでしたが、2024年1月18日に乳児用RSウイルスワクチンが日本でも承認されました。
ファイザー社の「アブリスボ」というワクチンです。
ユニークな点は「妊婦が接種することでお腹の中の赤ちゃんに効くワクチン」ということです。RSウイルスに対する抗体をもった状態で生まれてくることができ、肺炎などによる入院率を減らすことができます。
2024年6月の発売予定です(高齢者向けRSワクチンは2023年)。
取り扱い開始したらお知らせします。
乳児用RSウイルスワクチンてなに?
生まれて間もない赤ちゃんをRSウイルスから守ってくれることが期待されるワクチンです。
2024年1月18日、ファイザー社の「アブリスボ®︎筋注用」というワクチンが国内発の承認を取得しました。
「母子免疫ワクチン」といって、 妊婦に接種することで母体のRSウイルスに対する中和抗体価を上げ、それが胎児に移行することで、生まれたときから乳児のRSウイルスによる肺炎‧気管支炎を予防したり重症化リスクを下げることが期待されています。
「シナジス」というワクチンは以前からありますが、早産児や心臓‧肺‧免疫不全などの疾患、ダウン症候群などの基礎疾患がある児を対象に生後に接種するというもので、正期産児には適応外です。
今回はすべての児が対象となります。
RSウイルス感染症とは
RSウイルス感染症は日本で5類感染症に指定されており、RSウイルスは2歳になるまでにほぼすべての乳幼児が感染するとされています(1-3)。
乳児の肺炎や細気管支炎を引き起こし、生後6ヵ月齢未満で感染すると重症化するリスクがあがります。
日本では、毎年約12万〜14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、その約4分の1が入院を必要とすると推定されています。
基礎疾患を持たない乳幼児が入院となる場合も多く、生後1〜2ヵ月時点でピークとなります。
したがって、生まれてすぐの予防策が必要です。
また、特効薬は今のところないため、肺炎で入院した場合も酸素投与や点滴などの対症療法しかなく厄介な感染症です。
乳児用RSウイルスワクチンの効果は?
- 根拠となった臨床試験|MATISSE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号NCT04424316(ファイザー社から研究助成)(4)
- 妊婦への接種で、生後90日以内の乳児の入院率が80%減少しました
乳児用RSウイルスワクチンの安全性は?
- 観察期間中の母親と月齢24ヶ月までの乳幼児に安全性の懸念はありませんでした
- 女性の注射後 1 ヵ月以内、児の生後 1 ヵ月以内に報告された有害事象の発現率は同程度でした
乳児用RSウイルスワクチンはいつ‧何回接種するの?
- 対象: 妊娠24〜36週の妊婦
- 回数: 1回接種
- 投与方法: 0.5 mLを 筋肉内注射
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取り扱い開始したらお知らせします。
参考文献
- 国立感染症研究所(IASR Vol. 43 p79-81:2022年4月号)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/rs-virus-m/rs-virus-iasrtpc/11081-506t.html - Kobayashi Y, Togo K, Agosti Y, et al.Epidemiology of respiratory syncytial virus in
Japan:
A nationwide claims database analysis. Pediatr Int. 2022 Jan;64(1):e14957 - Kampmann B, Madhi SA, Munjal I, et al. Bivalent prefusion F vaccine in
pregnancy to prevent RSV illness in infants. N Engl J Med. 2023;388(16):1451-
1464.