小児科

水イボ

水イボ

水イボは、水っぽく光沢のある小さなイボができる皮膚の感染症で、子どもに多く見られます。放っておいても自然に治りますが、その間に悪化したり、周囲に感染が広がったりするリスクがあるため、摘み取るなどの治療を行う場合があります。

水イボの子どもとおとなの症状や治療法、子どもが治療を受ける際に保護者が実施するべきことについて、大森ステーション内科小児科クリニックが解説します。当クリニックでは水イボの診療も行っておりますので、気になる症状があればお気軽にご相談ください。

水イボとは水っぽいイボが特徴的な皮膚の感染症

水イボとは、伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)ウイルスによって引き起こされる皮膚の感染症です。人と人との接触により感染が広がりやすく、とくに皮膚を保護するバリア機能が未熟な7歳以下の子どもに多く発症します。

水イボと呼ばれる理由は、発症すると水っぽい光沢のあるイボが現れるためです。イボの中には、モルスクム小体と呼ばれるウイルスが変性した白っぽい塊が存在します。

水イボは、放っておいても半年から2~3年で自然に治る感染症です。ただし、治るのを待つ間に悪化したり、周囲に感染が広がったりするリスクがあるため、摘み取るなどの治療を行う場合があります。

この治療は痛みをともない、子どもに苦痛を与えることもあるため、取らずに自然に治るのを待つという選択肢も。『取るか・取らないか』に正解はないので、保護者と医師が十分に話し合って治療方針を決める必要があります。

水イボの感染経路は接触感染

水イボの感染経路は「接触感染」と呼ばれるもので、皮膚と皮膚が直接触れることで感染します。また、ウイルスの付いたタオルなどから感染が広がるケースもあります。

感染を広げないためには、皮膚の直接接触や、ウイルスが付く可能性がある物の共有を避ける必要があります。

子どもとおとなの水イボの症状

子どもが水イボを発症すると、2〜5mmほどの表面に光沢のある水っぽいイボが現れます。水イボは、以下のような経過をたどって広がっていきます。

  1. イボを掻いて潰してしまう、または自然に崩れる
  2. イボの中身(ウイルス)が周囲の皮膚に付き、感染が広がる
  3. 1〜2の流れで次々と広がっていく

水イボが現れる主な部位は、お腹や手足、背中などです。とくに、腕の内側や脇の下などの皮膚がこすれやすい部分は広がりやすい傾向にあります。

水イボは、かゆみをともなうことも。かゆみによりイボを引っ掻いて潰してしまい、その指で離れた皮膚に触れることで感染が広がるケースもあります。

一方で、おとなが水イボを発症するケースはそれほど多くありません。ただし、免疫機能が低下している方は発症することがあります。また、まれに性感染症として水イボのウイルスに感染することもあり、発症すると外陰部にイボが現れます。

水イボの主な3つの治療法

水イボの主な治療法は以下の通りです。

水イボの治療法詳細
1.摘除術トラコーマ摂子により摘み取る
2.凍結療法液体窒素によりイボを凍結させる
3.薬物療法塗り薬により治療を行う

それぞれの詳細を解説します。

1.摘除術|トラコーマ摂子により摘み取る

摘除術(てきじょじゅつ)は、先端が輪になったトラコーマ摂子(せっし)という専用の器具で、水イボを摘み取る治療法です。摂子で水イボの根元を挟み、モルスクム小体を取り出します。

摘除術は、他の水イボの治療法よりも早く治せる方法です。しかし、水イボを摘まむ際に「チクッ」とした痛みをともなうという問題点があります。10個以内のイボであれば、子どもでも我慢できることが多いと言われています。

ただし、イボの数が多くなると痛みが増し、治療を怖がったり泣いてしまったりする子どももいます。さらに、数が多いと何回かに分けて摘除術を実施する必要があります。局所麻酔が配合されたクリームやテープもありますが、痛みが完全になくなるわけではありません。

2.凍結療法|液体窒素によりイボを凍結させる

凍結療法とは、液体窒素によって水イボを凍結させて除去する治療法です。個人差はありますが、氷を押し当てられたときのような痛みを感じると言われています。

凍結療法も摘除術と同様に有効な治療法ですが、痛みをともなうため、子どもにとっては負担となる場合があります。

施術後の反応として、痛みや水ぶくれ、色素沈着などが見られることがあります。これらを考慮して治療を検討しなければなりません。

3.薬物療法|塗り薬により治療を行う

イボを柔らかくする軟膏や、抗菌作用のある銀イオン配合軟膏などによる治療法もあります。軟膏を用いた治療のメリットは痛みを避けられる点です。

薬物療法の場合は、2〜3カ月ほどの期間が必要になります。例えば、銀イオン配合軟膏による治療は、1日2回(朝と入浴後)軟膏を塗ることで以下のような経過をたどります。

  1. 2週間から2カ月ほどで水イボの部分だけ赤くなる
  2. 赤くなってから1カ月ほどかけて、徐々にイボが消える

ただし、効果が出てくるまでの期間は個人差があります。

子どもが摘除術などを受ける際に保護者が実施すべき3つのこと

摘除術や凍結療法は痛みをともなうため、子どもが怖がって泣いたり、処置を嫌がったりすることがあります。子どもがこれらの治療を受ける際に、保護者が意識したいポイントをご紹介します。

  1. 治療について事前に説明する
  2. 処置中に協力できる準備をしておく
  3. 自宅に帰ったら子どもをほめてあげる

以下で詳しく説明します。

1.治療について事前に説明する

処置当日に子どもを必要以上に怖がらせないために、あらかじめ以下のことを説明しておきましょう。

  • どのような処置を受けるのか
  • なぜその処置を受ける必要があるのか

なお、処置前には、医師や看護師からもどのような処置を受けるのか、なぜ必要なのかについての説明があります。

しかし、そのときに納得しても、治療を受けるのが別の日だと忘れてしまっていることも。そのため、病院に行く前には、子どもが理解できるようにもう一度話しておきましょう。

2.処置中に協力できる準備をしておく

子どもが処置を嫌がって動いてしまうと、周辺器具などにぶつかってケガをするおそれがあります。処置中に以下のような協力ができるように準備しておいてください。

  • 嫌がる子どもをなだめる
  • 医師や看護師と一緒に子どもの体を支える
  • 処置が見えないように抱っこする

医師や看護師と協力して、子どもが安全に治療を受けられるように努めましょう。

3.自宅に帰ったら子どもをほめてあげる

治療が終わり自宅に帰ったら、頑張った子どもをほめてあげましょう。数回に分けて治療を行う場合もあるため、ほめて前向きな気持ちを持たせてあげることが大切です。

心の準備ができていない子どもに摘除術や凍結療法を無理に行うと、過度な恐怖やショックを与えるおそれがあります。処置を怖がり、長時間泣き止まない場合には、医師の判断で中断する場合もあります。

子どもが水イボを発症した際の対応方法

皮膚が荒れたり傷ついたりしていると、水イボのウイルスが侵入して感染が広がるおそれがあります。そのため、以下のことに注意して皮膚を健康な状態に保ちましょう。

  • 皮膚を清潔にする
  • 保湿をする
  • 爪を短く切る

摘除術を受けた場合、当日は少量の出血があるためシャワーのみにしましょう。翌日以降に様子を見て入浴を検討してください。入浴後は清潔なガーゼで水気を取り、絆創膏で保護しましょう。

ただし、治療後の対応は医療機関ごとに異なる可能性があります。治療を受ける際は、医師に指示を確認してみましょう。

水イボの予防法と周囲に広げない方法

水イボに対する特別なワクチンはありません。基本的な予防法は、日常的な手洗いに加えて、「爪を短く切る」「皮膚を清潔にする」などです。乾燥肌の子どもは水イボのウイルスに感染しやすいため、保湿剤によりスキンケアを行うことが大切です。

また、プールの水に含まれる塩素は、皮膚を乾燥させる原因になります。水泳教室に通っている場合は、泳いだ後に保湿するよう心がけましょう。

子どもが水イボを発症した場合は、他の子どもに感染を広げないために以下の点に注意してください。

  • 水イボの部分との直接接触を避ける
  • タオルを共有しない
  • 浮き輪やビート板の共有を避ける
  • きょうだいがいる場合は入浴するタイミングをずらす

お風呂のお湯で感染が広がることはありません。しかし、浴室の狭い空間では皮膚と皮膚が触れるおそれがあるため、他のきょうだいと同時に入浴させるのは避けましょう。

水イボに関するよくある5つの疑問

ここでは、以下の水イボに関するよくある5つの疑問について解説します。

  • Q1.水イボを発症したら出席・登園はしても良い?
  • Q2.水イボを発症したらプールに入ってはダメ?
  • Q3.水イボのわかりやすい見分け方はある? 
  • Q4.水イボにステロイドの塗り薬を塗るとどうなる?
  • Q5.水イボはピンセットを用いて自分で取っても良い?

それぞれの詳細を解説します。

Q1.水イボを発症したら出席・登園はしても良い?

水イボを発症した場合の登園や登校については、法的な決まりが定められていません。そのため、水イボを発症しても、学校などを休む必要はありません。

Q2.水イボを発症したらプールに入ってはダメ?

プールの水で感染が広がることはありません。ただし、皮膚と皮膚が直接触れ合うことや、タオル、浮き輪、ビート板などの共有を避けてください。

Q3.水イボのわかりやすい見分け方はある?

水イボを見分けるには特徴を捉えることが大切です。水イボの特徴は以下の通りです。

  • 直径2〜5mmほど
  • みずみずしい光沢がある
  • 表面はつるつるである
  • 中心が少しへこんでいる

水イボ以外の多くのイボは、表面が乾燥していることが多いです。これらの特徴を水イボであるかどうかの判断材料にしてください。

Q4.水イボにステロイドの塗り薬を塗るとどうなる?

水イボにステロイドを塗るとイボが増加します。ステロイドは、アトピー性皮膚炎の治療に用いられることが多い薬です。

そのため、アトピー性皮膚炎を発症している方が水イボを発症すると、適切に治療ができなくなるおそれがあります。アトピー性皮膚炎を発症している子どもに水イボを疑う症状が現れたら、まずは受診をしてください。

Q5.水イボはピンセットを用いて自分で取っても良い?

水イボは専用のトラコーマ摂子で除去する必要があります。一般的なピンセットを用いて水イボを除去しようとすると、傷をつけてしまい悪化させるおそれがあります。自己判断による処置は避けてください。

なお、当院では水いぼを取る処置は行っておりません。診断後、保護者の方と治療方針についてご相談の上、取ることを希望される場合は皮膚科をご紹介いたします。