狭心症 / 心筋梗塞
胸が痛いと感じると、「自分の心臓は大丈夫だろうか?」
と不安に思われることもあるのではないでしょうか。
最近は健康に関する情報が普及しており、左腕の痛みや奥歯の痛みなどから、心臓からの症状(放散痛)ではないか、と心配されて受診される方が多くいらっしゃいます。
それは、やはり 心臓の病気=コワイ というイメージが強いからでしょう。
狭心症 / 心筋梗塞の原因
心臓は、コブシ大くらいの、筋肉の塊のようなものです。
大動脈という太いホースを通じて、カラダの大切な臓器に血を送るポンプとして働きます。
しかし、心臓自身も、筋肉の塊ですから、自ら血をもらわないと生きていけません。
大動脈の付け根から、冠動脈(かんどうみゃく)と呼ばれる太さ2-3mmの血管を出して、一番キレイな血を心臓自身の筋肉に送るようにしています。
冠動脈は、命を守る大切な血管であるにも関わらず、動脈硬化のダメージをうけやすいとても繊細な血管です。
血管の内側にプラークとよばれるゴミがつくと、血が流れるスペースがふさがれて、細くなってしまいます。
冠動脈の血液の流れが悪くなっても、心臓は動き続けなければなりませんから、心臓は、ガス欠の状態で、馬にムチ打つように働くことになります。
その心臓の悲鳴を胸の痛みとして感じるのが、狭心症、心筋梗塞です。
狭心症と心筋梗塞の違い
プラークが少しずつ成長して徐々に冠動脈が細くなるのが狭心症で、血のかたまりが急にできて詰まってしまうのが心筋梗塞です。
狭心症では、「坂道や階段の上り下りの時だけ胸が苦しくなるが、2-3分休むと治る」と言った症状が多く見られます。早めに検査する必要があります。
一方、心筋梗塞では、痛みがずっと持続することが多く、緊急で治療(心臓カテーテル治療・冠動脈バイパス術など)が必要な状態です。コワイことに、糖尿病の方は、胸の自覚症状を全く感じないことがあります。
知らない間に心臓の一部が壊死していた、ということもありますので、心臓エコー検査など精密検査がすすめられます。
心電図が正常でも、冠動脈が細くなり危険な状態、ということもよくあります。
日本人に多い血管のけいれん
一般的な狭心症では、カラダを動かしたり、普段より心臓が頑張らないといけない時に、十分な血を供給できないため、胸が痛くなります。
それとは別に、異型(いけい)狭心症といって、血管のけいれんが起きる、という病態があります。
年齢層は様々で、若い女性の方でもあります。
普段はツルツルのキレイな冠動脈なのですが、深夜〜明け方に、血管がけいれんすることで、胸がしめつけられるような痛みやノド・奥歯の痛みがでる、というものです。
日本人に多いですが、欧米の方では頻度が少ないため、病態はまだすべて解明されていません。
ニトログリセリンが有効で、舌下に投与すると速やかに胸の症状が消えるケースが多く見られます。
生活に不安を与えるだけでなく、まれに心筋梗塞になることもあり、あなどってはいけません。
お酒、タバコはけいれんを出やすくする危険因子です。深酒した翌朝に決まって胸が痛くなる、ということもあります。
ニトロは効きますが、あくまでけいれんが起こった時の応急処置なので、
- 生活習慣の見直し(禁酒、禁煙など)
- けいれんを予防する薬(カルシウム拮抗薬、ニコランジル)
で発作を起こさないようにすることが大切です。
心臓は、時間との勝負です。
最初の対応が、いかに適切に、素早く行われるかが命運を分けることもあります。
当院では、専門医による評価を行いますので、胸の症状が気になる方はお早めにご受診ください。
また、血管を広げる治療(心臓カテーテル治療、冠動脈バイパス術)を受けられたことがある方は、その後のお薬の治療が、手術と同じくらい大切です。
術後の管理も積極的に行っておりますので、ご相談ください。