ステロイド剤の誤解
ここでは、ステロイドの「外用薬(塗り薬)」について記載していきます。
ステロイド剤は開発されてから半世紀以上が経つ、長い歴史を持つ薬です。
一部の知識のみを切り取った情報が流れているため、「皮膚が黒くなる」「顔が丸くなる」などの副作用が怖いというイメージを持っている方も少なくないかと思います。
ステロイドにより重大な副作用が出る場合のほとんどは「内服や点滴などを、長期間にわたって全身に投与した場合」です。
正しく使用すればきちんと治癒できるはずなのに、漠然とついてしまっている”怖い”というイメージのために避けている方もいるでしょう。
そこで、こちらの項目では正しい情報をお伝えしていきます。
皮膚が黒くなる
ステロイド外用の使用によって黒くなることはありません。
「黒くなった」と誤解されているのはステロイド剤を使用したためではなく、皮膚が治癒していく過程での一時的な変化です。
特に、黒くなってしまう場合としては、長期間治療をせずに放置していたことによる炎症の悪化や治療を途中でやめてしまった際に皮膚の状態が良くない場合に黒くなると考えられています。
また、ステロイドに限らず、一緒に入っている添加物の成分が原因で日焼けに対して過敏な反応が起きることもあります。
その他、ステロイド外用を長期に使うことで血管が開いて目立ってくる場合があります。
体内に残る / 癖になる
ステロイド外用によって、ステロイドの成分が体内に蓄積されることはありません。
うまく活用して患部の症状がよくなれば、ステロイドの使用を中止または漸減(徐々に減らしていく)します。
顔が丸くなる / 骨がもろくなる
大量に長期間使用する場合、その可能性はあります。
大量とは、1日で40~50gなど大量に使用する場合を指しますので、一般的には起きません。
この質問が絶えない理由は、まれに起こる内服や点滴などによるステロイドの全身性副作用と勘違いされているからと思われます。
いわゆる「ムーンフェイス」と呼ばれる顔が丸くなる現象は、ステロイドの内服・点滴を長期間続けることで見られる副作用です。
副作用やリバウンドについて
ステロイド外用では副作用の頻度は少ないと言えるでしょう。もちろんゼロではありませんが、適切に使用すればメリットの方がはるかに大きい薬です。
治療を中断することで、治療をはじめる前より悪化してしまうケースを「リバウンド」と呼びます。適切な治療を行えばリバウンドが起こることはありません。
ステロイド剤を使って湿疹・皮膚炎が改善した後に、急にステロイド剤をやめることでまた湿疹がでてきてしまう、ということはあります。その場合、急に中止するのではなく漸減(徐々に減らして別の薬に置き換えていくなど)したり、治療期間を延長したり、生活習慣を改善したり、といった工夫が必要となります。
アトピー性皮膚炎に代表される慢性湿疹は、一時的に症状が良くなっても完治することはないため、長期間、広範囲に薬物治療を続けることになります。
皮膚炎が重症な時は、集中的にしっかりとステロイドを使わないとよくなりません。長期間ステロイド外用を大量に続けることは望ましくありませんので、ステロイドで一旦状態を落ち着けた後は、長期間使用できる塗り薬に置き換えていきます。
自身の判断で治療を中止することなく、担当医の指示に従いましょう。