おたふくかぜとは
おたふくかぜは幼稚園や小学校低学年の子どもたちに多くみられる感染症です。
感染している人のくしゃみや咳などによって空気中に放たれたムンプス(おたふくかぜ)ウイルスを吸い込むことで感染します。
おたふくかぜの症状
2〜3週間の潜伏期間を経て発症します。
症状は軽度の発熱と耳の痛みから始まって、耳の下(耳下腺)の腫れが顕著になっていきます。これらの症状は、通常5〜7日で回復に向かいます。
また、下記のような様々な合併症を伴うことがあります。なかに重篤な合併症や後遺症を残すものもあるため、注意しましょう。
- 無菌性髄膜炎
10〜100人に1人の割合で合併すると報告されています。
発熱や頭痛、嘔吐などの症状が現れることがあります。 - ムンプス難聴
およそ1000人に1人の割合で合併すると報告されています。 - 脳炎
5000〜6000人に一人の割合で合併すると報告されています。
発熱の持続や、けいれん、意識障害などの症状が現れることがあります。 - 睾丸炎
思春期頃におたふくかぜに罹った人のうち、数%の人が合併すると報告されています。
発熱、睾丸膨張などの症状が現れることがあります。
この合併症が男性不妊の原因となることは非常にまれです。
この他にも卵巣炎や膵炎なども合併症として報告されています。
おたふくかぜの予防方法
おたふくかぜワクチンの予防接種を受けた人のほとんどに免疫ができます。
確実にムンプスウイルス感染によるものという裏付けはないものの、すでに一度おたふくかぜに罹ったことのある人が耳下腺炎を発症する(再発性耳下腺炎)例も報告されています。
また、小さな子どもがおたふくかぜに罹った場合、特徴的な症状が現れない不顕性感染で終わり、感染経験の自覚がないまま生活していることもあります。
ワクチンの予防接種は、すでに抗体のある人への実施も問題なく行えますので、免疫を高めるためにも予防接種を受けると良いでしょう。
おたふくかぜワクチンとは
おたふくかぜワクチンは弱毒生ワクチンです。
接種すると体内でワクチンウイルスが増加していき、抗体ができます。おたふくかぜの潜伏期間にワクチンを接種してしまったとしても、おたふくかぜの症状が重くなるといったことはありません。
日本におけるおたふくかぜワクチンの接種率は低く(約40%)、今後大きな規模でおたふくかぜが流行する可能性は大いにあります。おたふくかぜの後遺症は日常生活に支障をきたすこともあります。採血などを行っておたふくかぜの確定診断を受けたことのある方以外のすべての方に、おたふくかぜワクチンの2回接種が推奨されています。
また、おたふくかぜワクチンは任意接種となります。ワクチン接種を受けるかどうかは、事前に効果や副反応などをよく確認してから決めましょう。
おたふくかぜワクチンの効果
抗体はワクチン接種を受けた90%前後の人にできます。おたふくかぜに対する免疫はワクチン接種から2週後以降にできます。
おたふくかぜワクチンの副反応
ワクチン接種後2~3週頃に現れる副反応で、通常は数日以内に消失する
- 発熱
- 耳下腺の腫れ
- 鼻水
- 咳
- 嘔吐
ワクチン接種後およそ30分間にまれに現れる副反応
- アナフィラキシー
蕁麻疹、血管浮腫、呼吸困難などの症状が現れることがあります。 - ショック
頻脈、冷汗、顔面蒼白などの症状が現れることがあります。
臓器への血流の不全が起こり、命にかかわる危険な状態に陥ることがあります。
接種後3週前後に現れる合併症
- 無菌性髄膜炎
頻度は数千人に1人(0.03%〜0.06%)と、非常にまれに報告されています。
発熱、頭痛、嘔吐などの症状が現れることがあります。
接種後数日~3週前後に現れる合併症
- 血小板減少性紫斑病
頻度は100万人に1人程度と、極めてまれに報告されています。
紫斑、鼻出血、口腔粘膜出血などの症状が現れることがあります。
また、頻度は不明であるものの、脳炎や脳症、急性散在性脳脊髄炎、急性膵炎などが現れることがあり、まれに難聴、精巣炎が現れたとの報告もあります。
しかしながら、おたふくかぜに感染した際の合併症と比較して、ワクチン接種による合併症は頻度が少なく、安全であると考えられています。
おたふくかぜワクチンの接種によって健康被害が生じた場合、「医薬品副作用被害救済制度」によって治療費等が受けられる場合があります。詳しくは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページ等をご覧ください。
おたふくかぜワクチンを接種できない人
- 明らかな発熱のある方
- 重い急性疾患に罹っている方
- 免疫機能に異常のある疾患がある方、あるいは免疫抑制をきたす治療を受けている方
- おたふくかぜワクチンに含まれる成分(抗生物質のカナマイシンやエリスロマイシンなど)によって、アナフィラキシーなどの強いアレルギー症状を起こしたことがある方
- 妊娠中や妊娠している可能性がある方
この他にも医師から接種が不適当と判断されることがあります。
また、4週間以内に他の予防接種を受けたという方は、医師に相談しましょう。
なお、ワクチン接種前の1か月間、ワクチン接種後の2か月間は妊娠を避けてください。
おたふくかぜワクチン・抗体検査の費用
項目 | 費用(税込) |
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感染症抗体検査セット (麻疹・風疹・水痘・おたふくの抗体価) | 13,200円 |
おたふくかぜワクチン | 4,950円 |
おたふくかぜワクチンの接種回数・間隔
おたふくかぜワクチンの接種回数は2回です。1回目の接種での有効率はおよそ78%、2回目の接種での有効率は90%前後になります。
日本でおたふくかぜに罹る人の約60%は3〜6歳の子どもと言われています。子どものいる家庭では、1歳の時に1回目のワクチン接種を受けさせて、集団生活に入る前の5歳〜7歳のうちに2回目のワクチン接種を受けさせることが推奨されてます。
また、大人であっても、過去にワクチン接種を2回を受けたことがない方や今までおたふくかぜに感染したことがない方には、ワクチン接種が推奨されています。
おたふくかぜワクチンの接種間隔については、1回目の接種後から28日以上あけていれば、2回目の接種が可能となります。間隔については大人、子どもに共通しています。そのため、1歳の時に1回目の接種を受けさせていなかった場合でも、改めて接種スケジュールを組み直すことができます。