発熱でつらい時、ひとまず解熱剤で対処するという方も多いでしょう。しかし、その発熱の原因がインフルエンザウイルスであった場合、使用する解熱剤には注意が必要です。今回はインフルエンザに罹っているときに使用を避けるべき解熱剤について解説します。
インフルエンザ罹患時に使用を避けるべき解熱剤とは?
NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)と呼ばれる種類の鎮静剤は、インフルエンザに罹っている時は使用を避けることが推奨されています。
使用を避けるべき解熱剤、その理由は?
NSAIDsはインフルエンザ脳症という合併症との関係が指摘されています。
インフルエンザ脳症とは
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザに伴って発症する病気です。高熱、意識障害、けいれん、異常行動など急速に進行する神経症状がみられ、重症化すると脳神経系に異常が生じて死に至ることもあります。その死亡率は約30%、後遺症率は約25%と言われています。1999年、2000年のインフルエンザ脳炎・脳症研究班(森島恒雄班長)の報告では、インフルエンザ脳症を発症した方がジクロフェナクナトリウムまたはメフェナム酸という成分を含んだ薬剤を使用していたとし、これらの成分がインフルエンザ脳症の発症、重症化に関与しているという見解が出ています。このジクロフェナクナトリウムはボルタレンという薬に、メフェナム酸はポンタールという薬に含まれている成分で、いずれもNSAIDsに分類されます。NSAIDsにはボルタレンやポンタール以外にもいろいろな薬剤が含まれていますが、その他の薬剤については使用頻度の低さからインフルエンザ脳症との関連は明確になっていないと同時に、十分な安全性も確認できていません。なによりインフルエンザ脳症との関係を指摘されている薬剤が含まれることから、すべてのNSAIDsの使用を避けるように推奨されています。
インフルエンザ罹患時に使用しても安全な解熱剤は?
インフルエンザによる発熱に対して使用可能な薬剤として、アセトアミノフェンという成分を含んだ薬剤が挙げられます。代表的なものには、カロナール、アンヒバ坐剤、アルピニー坐剤などがあります。アセトアミノフェンは解熱のほかに頭痛や歯痛などへの使用頻度も高く、副作用のリスクの小ささから、高齢者や乳幼児の発熱に対しても使用されています。また前項の調査においても、発熱に対して使用頻度が高いアセトアミノフェンと、インフルエンザ脳症との関連は見られないとされており、比較的安全な成分として使用を推奨されています。
解熱剤を使いたい、でもインフルエンザかわからない。そんな時は?
インフルエンザに罹患しているかわからないが高熱の症状がつらくて解熱剤を使いたい時にも、アセトアミノフェンを含む薬剤の使用をおすすめします。
不安な時は医療機関へ相談を
インフルエンザに罹っているかもしれないという方やどの薬がよいかわからないという方、少しでも不安な方は医療機関へご相談ください。インフルエンザ患者との接触の有無、発熱の時期や症状などからインフルエンザの迅速な検査、診断が可能な場合があります。ただし、実際にウイルスに感染していた場合でも、発熱直後はウイルスの排出量が少ないために検査結果が陰性となることがあります。そのときは再度受診する必要がありますが、症状を楽にするために医師はより良い薬を処方します。薬の服用が不安な方や症状がつらい方、特に何らかの基礎疾患をお持ちという方は自己判断せずに医療機関を受診するようにしましょう。
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