コラム

国内でも要注意!「はしか」の初期症状、風しんとの違いについて解説

はしかとは?

はしか(麻しん)は、ウイルスによって引き起こされる非常に伝染性の高い感染症です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、2021年は麻しんワクチンの初回接種率が2008年以来最低となり、4,000万人以上の子どもたちが接種を受けられなかったことから、世界中でより大きな麻しん流行のリスクが高まっています。
NIID国立感染症研究所によると、2023年6月の時点ですでに世界全体で10万例以上の報告が上がっています。(出典:海外の麻しん―2022年の流行状況について(niid.go.jp)
日本国内でも3月に20代の女性の感染が確認されています。

主に子供や若い大人に感染しますが、どんな年齢の人でも罹患する可能性があります。
免疫がない人が感染するとほぼ100%発症し、肺炎や脳炎などの合併症を起こすリスクもあります。
予防のためには、ワクチン接種が推奨されています。

はしかの原因

はしか(麻しん)はウイルスによる感染症です。感染経路は以下の3つです:

  • 飛沫感染
    感染者が咳やくしゃみをする際に放出される飛沫に含まれたウイルスが、他の人に感染します。
  • 接触感染
    感染者の体液(鼻水や唾液など)を介してウイルスが広がります。例えば、感染者の手で触れた物体から他の人がウイルスに触れることで感染します。
  • 空気感染
    部屋内で感染者がいる場合、ウイルスが浮遊して他の人に感染することがあります。

麻しんウイルスは感染力が非常に強く、感染者1人当たり12~14人に感染させる力を持っています。
この数字はインフルエンザ感染の10倍に相当します。

はしかの症状

はしかの症状は以下のようなものがあります。

  • 38度以上の発熱、咳・鼻水などの気道症状、結膜炎(目の充血、めやに・涙)
  • 口内の頬粘膜にできる白い斑点(コプリック斑)や全身の発しん
  • 全身へ広がる赤い発しん

はしかの症状の特徴として上記のような発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状のほか、目の充血や目やになどの症状が初期症状として現れ、2~4日間続きます。
その後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。
はしかの症状は通常7~10日間程度で、症状は徐々に回復します。

合併症として、肺炎、脳炎、中耳炎、クループ(のどの奥が感染により腫れてしまうことで、声がかすれたり、息を吸うときにヒューヒューと音がしたりすること)などがあり、重症の場合入院することもあります。
特に発症1,000人に1人から2人の頻度で生じる急性脳炎では、生命に危険が及んだり後遺症を残すこともあるため注意が必要です。

風しんとの違い

はしかと風しんは、ともに発しん症状を伴う急性ウイルス性感染症ですが、以下の点で大きく異なります。

原因ウイルス感染経路発症までの潜伏期間症状の違い
はしかパラミクソウイルス科のマイナス単鎖RNAウイルス
(麻しんウイルス)
飛沫感染や空気感染が主10~14日高熱症状の後に全身に発しんが現れる。
発しんは個々が癒合して拡大するのが特徴。
風しんに比べると症状が重く、合併症として肺炎や脳炎を引き起こす可能性がある。
風しんトガウイルス科のプラス単鎖RNAウイルス
(風しんウイルス)
飛沫感染と接触感染が主で、空気感染はほとんどない14~21日小さな紅色の発しんが顔から現れ、やがて全身に広がる。
首や耳の後ろなどのリンパ節が腫れることがある。
半数程度は発熱せず、発しんも3~5日程度で消える事が多い。
一般的にははしか(麻しん)より軽症だが、女性が妊娠初期に感染すると胎児に重大な影響を及ぼす可能性がある。

このように、原因ウイルス、感染経路、発しんの特徴が異なり、合併症の種類も異なります。
 いずれも予防接種が重要な感染症です。

はしかの治療

はしかには特効薬がないため、多くの場合は対症療法が進められます。
発熱や咳などの症状を緩和するために、解熱剤や咳止め薬が処方されることがあります。
ただし、解熱剤には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を避けるように注意する必要があります。

はしかの予防法

はしかの予防法で最も有効な方法は予防接種です。
はしか(麻しん)ワクチンは1歳と小学校入学前の2回の接種が一般的です。

お子様への予防対策

日本では、1歳児に対して1回目、就学前の年長児に2回目の接種を行うことが定期接種として推奨されています。

ただし当日の健康状態や服用している薬によっては接種が適さない場合があります。
接種をご検討の際は、事前に主治医にご相談ください。

大人への予防対策

大人の方も、予防接種を一回しか受けていない場合や、抗体が不十分な場合があるため、過去の予防接種記録を確認したり、抗体価検査を受けることをおすすめします。 

まとめ

非常に感染力の強い「はしか」。
新型コロナの流行により、予防接種率が下がり世界中で流行しはじめ、ついに日本でも感染者が確認されました。

はしか(麻しん)には、さまざまな合併症が起こる可能性があります。
最も一般的な合併症としては、肺炎や中耳炎が挙げられます。

しかし、まれに重篤な合併症を引き起こすケースもあります。
脳炎や亜急性硬化性全脳炎などの中枢神経系の合併症は約1,000人に1人の割合で脳炎を発症し、その半数以上は回復しますが、一部の患者に後遺症が残ることもあります。

このように、はしかは軽視できない感染症です。
確実な予防にはワクチン接種が有効な手段となります。
また、抗体検査を受けて、自分に抗体があるかを確認することも大切です。

エキクリ各院でも抗体検査・ワクチン接種が可能です。
ぜひ一度ご相談ください。

※ワクチン接種を2回完了していない方で、発熱や結膜炎、気道症状に続き赤い発疹が出た場合は、はしかが疑われます。
医療機関を受診する際には、来院前に受診先の医療機関に連絡し、「症状」や「はしかの疑い」をあらかじめお伝えください。