髄膜炎菌性髄膜炎とは
化膿性髄膜炎のうち、髄膜炎菌によって引き起こされるものを髄膜炎菌性髄膜炎といいます。流行性の髄膜炎を引き起こす原因の細菌が髄膜炎菌のみであることから、流行性髄膜炎ともよばれています。
世界全体としては毎年30万人が発症、3万人が死亡しています。温帯では寒い季節、熱帯では乾季に流行します。特に「髄膜炎ベルト」と呼ばれるアフリカ中央部のサハラ砂漠以南での発生が多く、先進国においても散発的に発生しています。
髄膜炎菌は健康な人の鼻やのどの粘膜にも定着しており(保菌者)、感染者のくしゃみや咳などによる飛沫感染で拡がっていきます。そうして気道に入った髄膜炎菌が血流に乗って髄膜まで至ると、髄膜炎を引き起こします。
また、髄膜炎菌は少なくとも13種類の血清型に分類され、起炎菌として分離されるものではA、B、C、Y、W-135が多く、特にA、B、Cが全体の90%以上を占めています。
髄膜炎菌による感染症のうち、本来無菌環境である髄液や血液などから菌が検出されたものを侵襲性髄膜感染症とよびます。髄膜炎菌の血清型のうち、A、B、C、W、Y、Zが侵襲性の感染を起こします。
髄膜炎菌性髄膜炎の症状
1〜14日の潜伏期間ののち、下記の症状が現れます。
はじめに現れる症状
- 菌血症
- 高熱
- 皮膚や粘膜の出血班
- 関節炎
数時間後に現れる症状(髄膜炎)
- 頭痛
- 発疹
- 吐き気・嘔吐
- 精神症状
- 項部硬直(首の後ろが硬くなる)
劇症型の場合
- 高熱
- 頭痛
- 低血圧
- けいれん
- 意識障害
- 皮膚や粘膜の出血班
- ショック
- 治療が遅れた場合、発症から数時間~1、2日以内に死亡
菌血症だけで回復する場合もありますが、敗血症や髄膜炎を起こした場合には治療を行わないとほぼ100%の人が死に至るとされています。
髄膜炎菌性髄膜炎の予防方法
髄膜炎流行地域に滞在し、感染リスクのある方には、髄膜炎菌ワクチンの予防接種が推奨されています。大勢の人が集まる場所へ行ったり、集団生活を送ったりする予定の前にはワクチン接種を受けましょう。
また、髄膜炎菌性髄膜炎を発症した人の家族、同じ寮などで暮らす人、学校などで密に接触した方などは、予防内服を行うことがあります。
髄膜炎菌ワクチンとは
髄膜炎菌ワクチンのメンクアッドフィは、国内承認済みの不活化ワクチンです。従来の髄膜炎菌ワクチンであるメナクトラの後継品と位置づけられています。高齢者への接種データもあり、幅広い年齢の方へ使いやすくなりました。
メンクアッドフィは、髄膜炎菌のうち、血清型がA、C、Y及びW-135による髄膜炎菌感染症の予防に用いられています。
髄膜炎流行地域への滞在や集団生活の予定、人混みのある場所へ行く予定などがある方は髄膜炎菌ワクチンの予防接種が推奨されています。
また、無脾症や脾臓摘出者、補体欠損症患者(特にC3、C5-C9の欠損)、免疫抑制患者やHIV感染患者などは、侵襲性髄膜炎菌感染症の危険が高くなるため、髄膜炎菌ワクチンの接種が推奨されています。
髄膜炎菌ワクチンの効果
効果はおよそ80〜95%とされており、効果の持続は接種から4〜5年間と言われています。
ワクチンの成分中に破傷風トキソイドが含まれていますが、破傷風の予防接種への転用は行えません。
髄膜炎菌ワクチンの副反応
メンクアッドフィを含む髄膜炎菌ワクチンの副反応として、下記の症状が報告されています。
通常は数日以内に消失する副反応
- 注射部位の痛み
- 倦怠感
- 筋肉痛
- 頭痛
海外で報告されている重篤な副反応
- アナフィラキシー
- ショック
- 失神(血管迷走神経反射)
- ギラン・バレー症候群
- けいれん
- 急性散在性脳脊髄炎
- 横断性脊髄炎
- 顔面神経麻痺
髄膜炎菌ワクチンを接種できない人
下記に当てはまる方はメンクアッドフィの接種を受けられません。
- 過去に髄膜炎菌ワクチンまたは破傷風トキソイドを接種したことによって、アナフィラキシーなどの強いアレルギー反応を起こしたことのある方
- 妊娠中および授乳中などで、接種の危険性が有益性を上回ると判断された場合(現在、妊娠中および授乳中の接種に関しては有効性や安全性が確立されていないため)
髄膜炎菌ワクチンの費用
項目 | 費用(税込) |
---|---|
髄膜炎菌ワクチン | 25,300円 |
髄膜炎菌ワクチンの接種回数・間隔
メンクアッドフィの接種回数は1回とされています。
2歳以上の方は、1回接種で4〜5年の免疫の持続効果があるとされています。そのため、接種から5年経過した後も髄膜炎の感染リスクが続いている場合には追加接種を受けましょう。
髄膜炎菌ワクチンのお申込
髄膜炎菌ワクチン接種については下記フォームよりお申込みください。