腸チフスとは
腸チフスは、サルモネラ属のチフス菌によって引き起こされる感染症です。
汚染された水や食料などを介して口から感染します。発展途上国を中心に頻度が高い疾患で、ごく少量の菌によって感染することもあります。
近年では、抗生物質に対する耐性菌の出現も確認されており、罹患してしまうと治療が難航して長引いてしまうことも多いと言われています。
また、腸チフスと症状がほぼ同じである「パラチフス」という感染症があります。パラチフスは、パラチフス菌によって引き起こされる感染症であり、一般には腸チフスと比較して症状が軽症であるとされています。
腸チフスの症状
1〜3週間の潜伏期間ののち、下記の症状が現れます。
- 高熱
- 全身倦怠感
- 頭痛
- 便秘
また、高熱時には胸や腹、背中に淡いピンク色の発疹が現れることがあります。
熱が高い割に、脈が遅いというのが特徴的です。
重大な症状としては、腸からの出血や腸に穴が開くことが挙げられます。
腸チフスの予防方法
腸チフスは世界中でみられる感染症ですが、アフリカ、東南アジア、カリブ海、中央および南アメリカなどが感染の危険性が高いと考えられています。特に南アジアでは他の地域の6〜30倍高いリスクがあります。これらの地域に滞在する際は、腸チフスに感染しないように対策することが大切です。
腸チフスを予防するために、食事の前には十分に手を洗いましょう。
また、摂取する飲食物は十分に加熱されたものにしましょう。生水、氷、生野菜や生肉などからは感染する可能性があります。飲み水は、一度沸騰させた水や、ビン入りのミネラルウォーターにしましょう。カットフルーツなども洗った水が汚染されて感染することがありますので、皮の傷みがないものを自分でむいて食べると良いでしょう。
そして、腸チフスの流行地域に滞在する予定があるという場合には、ワクチンの予防接種を受けることを検討しましょう。
腸チフスワクチンとは
現在、日本で最も用いられている腸チフスワクチンはTyphim Vi®です。Typhim Vi®は、国際的にも広く使用されている不活化ワクチンです。
また、新たに開発された不活化ワクチンのTypbar®は結合型ワクチンでWHOの推奨も受けています。Typbar®は、従来の多糖型ワクチンと比較して抗体獲得率が高く、且つ、免疫の持続期間も伸びています。
なお、腸チフスと類似した症状の現れるパラチフスへの予防効果は、腸チフスワクチンにはありません。
腸チフスワクチンの効果
日本に流通しているTyphim Vi®の有効期間は2年で、およそ50%程度の効果があるとされています。接種して2週間後から効果が現れます。
Typbar®は、3年おきの接種が推奨されており、接種を重ねるごとにより強い効果が得られるとされています。
腸チフスワクチンの副反応
Typhim Vi®の副反応として下記の症状が報告されています。
3~35%の方に現れる症状 | 注射部位の痛み 注射部位の腫れ |
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およそ10%の方に現れる症状 | 発熱 頭痛 |
まれに現れる重大な副反応 | 胸痛 血圧低下 |
現在、腸チフスに有効と考えられているワクチンについて、日本国内で承認されているワクチンはありません。そのため、一部の医療機関では海外から輸入した国内未承認ワクチンの接種が行われています。
国内未承認ワクチン接種による健康被害に対しては、予防接種法、施行令による救済制度の対象外となるため、輸入業者等による独自の補償制度に従うことになります。
予防接種を受けるかは、医師とよく相談して、ワクチンの副反応などのリスクを鑑みたうえで決定しましょう。
腸チフスワクチンを接種できない人
過去にTyphim Vi®の接種によって全身過敏反応が引き起こされた方は、Typhim Vi®の接種が受けられません。
また、Typhim Vi®は、2歳未満の方には免疫ができないため、推奨されていません。
ただし、Typbar®は生後6か月より接種が可能となっており、45歳まで適応となっています。
腸チフスワクチンの費用
項目 | 費用(税込) |
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腸チフスワクチン | 11,000円 |
当院では Typhim Vi®を接種しております。
腸チフスワクチンの接種回数・間隔
Typhim Vi®、Typbar®ともに1回接種です。
Typhim Vi®は生後2歳からの接種が可能です。
Typbar®は生後6か月〜45歳までの接種が可能です。
感染リスクが続く場合は、Typhim Vi®は2年ごと、Typbar®は3年ごとに再接種を行います。
腸チフスワクチンのお申込
腸チフスワクチン接種については下記フォームよりお申込みください。